フランスの詩人・文芸批評家バレリーの評論集。全五巻。1924~44年刊。青年時に書いたレオナルド・ダ・ビンチ論ほか一編を除き、著者が文名確立後発表の論文、随想を集めたもので、「多様性」を意味する標題そのままに多様な主題にわたる。これを著者自身は「文学的研究」「哲学的研究」「準政治的試論」「詩論と美学」「詩人の回顧」の5種に分類している。文学とは言語能力の拡大、変形にあるとして、伝記的批評を退けた作家論、作品論。意識的文学制作方法論の主張。詩の発現メカニズムの明晰(めいせき)な解剖。あいまいさを拒否する自意識劇の精密な分析。また、近代の混乱を直視しヨーロッパ文明の未来を憂える文明批評など。「純粋詩論」「パスカル批判」は論争を引き起こしたこともある。そのいずれも明晰、典雅な文体による厳密な思考表現で貫かれ、20世紀前半期批評文学の最高峰と目されている。
[清水 徹]
…詩集《魅惑》(1922),対話編《エウパリノス》(1921),《固定観念》(1932)などを次々と発表し,1925年アカデミー会員に選ばれ,あたかもフランスの公的な知的代表のようにしてヨーロッパ各地で講演を行う。《バリエテVariété》5巻(1924‐44)ほかにまとめられた批評は,意識的文学制作論の主張,詩のメカニスムの分析,絵画論,ヨーロッパの未来を憂える文明批評など多岐にわたるが,明晰典雅な文体による厳密な思考の表現として,20世紀前半の批評文学の金字塔と見なされる。しかし知性の詩人という名声と裏腹に1920年ごろ深刻な恋愛を経験,それ以後は若き日の決意とは変わって精神とエロスの一体化を掘り下げ自己を全的に成就することを内的課題とする。…
※「バリエテ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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