知恵蔵 の解説
バンクーバー冬季オリンピック
80以上の国と地域から、選手と役員合わせて約5千500人(予定)が集まり、7つの競技で86種目以上を競う。開・閉会式は、ドーム型屋内競技場のBCプレイス・スタジアム(バンクーバー)で行われる。開・閉会式とも屋内で行われるのは、夏季・冬季を通じオリンピック史上初めて。
バンクーバーから北へ約120km離れたウィスラーは、そもそも1968年の冬季オリンピック招致を目的として開発されたが、今回バンクーバーと共同で初のオリンピック開催実現となった。1960年代に最初に開発されたウィスラー山の西側斜面、クリークサイドが、アルペンスキー競技の会場となる。バンクーバーとウィスラーをつなぐハイウェイ99号線は、景色の美しさから”Sea to Sky Highway”の愛称をもつ。
本大会は「持続可能性(Sustainability)」をスローガンに掲げ、その具体的内容として「環境負荷を最小限にすること」「先住民族の参加と協力」を盛り込んでいる。このため、競技会場はできるかぎり既存の施設を利用し、また、積極的に先住民族出身の選手や大会スタッフの育成・参加をうながしている。
オリンピック・エンブレムのモデルには、先住民族イヌイットに伝わるイヌクシュック(石を人の形に積み上げたもの)が選ばれ、「Ilanaaq(イラナック)」(イヌイットの言葉で「友だち」の意味)と名付けられた。イヌクシュックは、「希望」と「友情」のシンボルであり、カナダが世界中の人々を歓迎するホスピタリティを象徴する。
オリンピック・マスコットは、先住民の神話からモチーフをとった“クワッチ(伝説の雪男)”、“ミーガ(シャチの化身とされるシーベア)”、“スーミ(シャチの頭にサンダーバードの翼とブラックベアの足をもった動物の姿の守護霊)”の3匹。
ギリシャのオリンピアで採火されたオリンピック聖火は、約12,000人のリレーによってカナダのすべての州および準州を経由し、約100日間かけて2010年2月12日のオリンピック開会式当日、BCプレイスに到着する。リレーの一部には、犬ぞり、カヌー、スノーモービルなど、カナダの人々の生活に根ざした移動手段が用いられる。
大会観戦チケットは、09年5月以降に販売開始予定。
(葛西奈津子 フリーランスライター / 2009年)
バンクーバー冬季オリンピック
(真田久 筑波大学准教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報