先住民族(読み)せんじゅうみんぞく

百科事典マイペディアの解説

先住民族【せんじゅうみんぞく】

一般に,ヨーロッパを起源とする〈近代化〉が世界的に展開する中で支配的集団により一方的に国家に統合されながら,民族としての存在と固有の文化を否定され,その植民地政策によって同化を強制された民族的集団をさす。英語でindigenous peoples。先住民とも。先住民族の認定には,どちらが先に住んでいたかの〈先住性〉や,何が民族であるかの〈民族性〉の問題は副次的であり,主権国家の成立が自己の国家宣言に始まるように,外部から定義されるのではなく,自己認定によるとされる。この点,〈先住民族〉は人類学概念ではなく,政治学の概念である。典型的な先住民族としては,〈インディアン〉(アメリカ・インディアン),〈インディオ〉と差別的な意味を込めて呼称されてきた南北アメリカ大陸の先住民族,北極圏のサーミ,オーストラリアのアボリジニーニュージーランドマオリ,東アジアのアイヌなどがある。また第2次世界大戦後の植民地解放は,それまでの植民地を地域の主要な民族に解放しただけで,〈国民形成〉という名目での植民地支配が継続しているという視点から,アジア・アフリカにおいても多くの民族的集団が自らを〈先住民族〉と主張している。 国連の推計によれば〈先住民族〉は世界70ヵ国以上に約3億人が生活しているとされ,その文化や環境には大きな違いがあるものの,コロンブス到達以降のアメリカ大陸の状況に象徴される共通の歴史を体験してきた。また,虐殺や弾圧などによる人権侵害のほか,大規模開発による生活環境の破壊,強制移住,貧困,差別など,今日の地球環境問題を含めて,近代社会のほとんどすべての矛盾を押しつけられてきた。しかし国連機構を中心とした国際社会で,自決権や土地権獲得などの積極的な運動を展開し(〈マボ判決〉参照),1993年の〈国際先住民年〉や1995年―2004年の〈先住民の国際10年〉などを契機に,広範な国際理解と具体的な権利回復が実現されつつある。先住民族の国際的な組織としては,国際インディアン条約評議会世界先住民族評議会イヌイット周極会議サーミ評議会などが代表的なものである。日本でも1997年に〈アイヌ文化振興法〉が制定されている。
→関連項目インディアン保留地国連NGOナショナリズムヌナブト

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世界大百科事典 第2版の解説

せんじゅうみんぞく【先住民族】


[考え方]
 一般に,〈近代〉国家が形成される段階で,〈未開〉であるとの偏見をもとに,民族としての存在と固有の文化を否定され,その伝統的領土とともに一方的にその国家に併合された民族集団を指す。その領土には植民地政策が敷かれ,大虐殺や強制同化政策などにより民族としての抹殺が行われるが,同化が進んでも,差別問題は解決しない。この点,先住民族は,近代国家に自らの意思で統合されたかどうか,植民地政策が行われたかどうかによって確認される政治学の概念であり,民族学や人類学の概念ではない。

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