バージニア・ウルフなんかこわくない(読み)ばーじにあうるふなんかこわくない(英語表記)Who's Afraid of Virginia Woolf?

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

バージニア・ウルフなんかこわくない
ばーじにあうるふなんかこわくない
Who's Afraid of Virginia Woolf?

アメリカの劇作家E・オールビーの三幕戯曲。1962年初演。小さな大学町の教師と総長の娘という中年夫婦の子供のない家庭。父の跡を継ぐ出世を期待して結婚した夫のふがいなさに挫折(ざせつ)感を抱く妻と、妻の価値観に背を向けた夫は、孤独をなすり傷つけあっている。劇は、自宅に新任教師夫妻を迎えた真夜中のできごと。前途有望な若い2人に刺激された主人夫婦は、自分たちのサド的、マゾ的心理合戦に客も巻き込む。劇が進むにつれて、社会的地位教養も見栄(みえ)も捨てた二組のインテリ夫婦が、偽善的愛、性生活ほか家族の絆(きずな)の秘密を粗野なことばで明るみにさらしていく。最後の場面でしらじらとした空虚な夜明けが、不毛な家庭の状況を苦々しく照らし出すこの作品は、いわば現代生活の寓話(ぐうわ)である。

 作劇上はリアリズムを踏襲しているが、主題を容赦なく追究する描写の衝撃力によって、1960年代アメリカ演劇のもっとも先鋭的な代表作となった。1966年には、ブロードウェーの舞台を演出したマイク・ニコルズ監督により映画化されている。

[楠原偕子]

『『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』(鳴海四郎訳『エドワード・オールビー全集1』所収・1969・早川書房)』

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デジタル大辞泉プラス の解説

バージニア・ウルフなんかこわくない

①1962年初演のエドワード・オールビーによる戯曲。原題《Who's Afraid of Virginia Woolf?》。1963年に第17回トニー賞(演劇作品賞)を受賞
②1966年製作のアメリカ映画。原題《Who's Afraid of Virginia Woolf?》。①の映画化。監督:マイク・ニコルズ、出演:エリザベス・テイラー、リチャード・バートン、ジョージ・シーガル、サンディ・デニスほか。第39回米国アカデミー賞作品賞ノミネート。同主演女優賞(エリザベス・テイラー)、助演女優賞(サンディ・デニス)、美術賞(白黒)、撮影賞(同)、衣裳デザイン賞(同)受賞。第20回英国アカデミー賞作品賞受賞。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

バージニア・ウルフなんかこわくない
Who's Afraid of Virginia Woolf?

アメリカの戯曲。3幕。 E.オールビー作。 1962年ニューヨーク初演。各幕にはそれぞれ「戯れ」「ワルプルギスの夜祭り」「悪魔払い」というタイトルがつけられている。大学の教授夫妻の生活を通して,家庭の危機を描いた作品。 62~63年度ニューヨーク劇評家賞を受賞。 66年映画化された。

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世界大百科事典(旧版)内のバージニア・ウルフなんかこわくないの言及

【オールビー】より

…《動物園物語》(1959。アメリカ初演は1960)や《アメリカの夢》(1961)など,アメリカ社会の偽善をあばいた一幕劇によって,オフ・ブロードウェーの代表作家となり,ニューイングランドの大学町を舞台にして2組の夫婦の虚飾を容赦なく剝ぎ取った長編劇《バージニア・ウルフなんかこわくない》(1962)の成功により,1960年代のアメリカのもっとも重要な劇作家とみなされるにいたった。その後の作品には,象徴性の強い《小さなアリス》(1964)や《海の風景》(1975),リアリスティックな《微妙な均衡》(1966)や《すべて終り》(1971)などがあり,初期の作品ほど高い評価は受けていないが,簡潔で鋭い台詞と人間の醜悪さを見すえる目とは一貫して認められる。…

※「バージニア・ウルフなんかこわくない」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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