改訂新版 世界大百科事典 「バースカラ」の意味・わかりやすい解説
バースカラ
Bhāskara
古代インド,8世紀後半の哲学者。生没年不詳。インド哲学の主流ベーダーンタ学派に属し,シャンカラの解釈や哲学説に対して批判的な学者の急先鋒であった。彼はシャンカラの死後,または同時代に活躍し,ベーダーンタ学派の伝統的立場である不一不異説に立脚して《ブラフマ・スートラ》と《バガバッドギーター》に対して注解を書き,シャンカラの幻影主義的不二一元論を攻撃し,実在論の立場に立って,多様な現象界の実在性を認め,ブラフマンと個我との関係を火と火花の関係に比した。実践論についても,伝統説にのっとり,解脱のためには知識も行為も必要であるとする知行併合論を主張して,知識のみが解脱の手段であるとするシャンカラ説を批判した。バースカラに後継者があったかどうかは不明であるが,おそらくシャンカラ派の勢力に圧倒されて,大きな社会的勢力とはなりえなかったと思われる。
執筆者:前田 専学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報