改訂新版 世界大百科事典 「パブリシティ権」の意味・わかりやすい解説
パブリシティ権 (パブリシティけん)
right of publicity
俳優,芸能人,スポーツ選手等の有名人は,人格的な利益が通常人に比べて減縮される一方,自己の氏名,肖像を対価を得て第三者に利用させうる財産的な利益がある。人の肖像,氏名が商品広告等に営利的に使用される場合に,人がもつ財産的な利益がパブリシティ権である。
アメリカでプライバシー権(プライバシーの権利)から派生し,多数の判例の積み重ねで認められているが,最近ではカリフォルニア州など10を超える州で明文化されている。1953年ハーラン・ラボラトリーズ対トップス・チューイングハム事件でこの言葉が用いられた。
日本ではマーク・レスター事件(1976年東京地裁判決)が,パブリシティの用語を用いなかったが,俳優の氏名・肖像の無断利用者に対し損害賠償を命じ,これはパブリシティ権を認めた最初の判決であるとされる(1989年9月27日東京地裁判決はパブリシティの権利と明記している)。
東京高裁1991年9月26日判決は,タレントの肖像・氏名をカレンダー等に無断で利用した者に〈氏名・肖像利用権〉に基づいて製造販売の差止めを命じ,〈人格権〉侵害により損害賠償を命じている。また,詩人にはパブリシティ権はないとの判決がある(土井晩翠事件,1992年横浜地裁)。死者の肖像・氏名についてパブリシティ権が相続されるかどうか争いがある。財産性を重視すれば,パブリシティ権は残存し,プライバシー,人格的要素を重視すれば,消滅することになる。パブリシティ権については,どこまで純粋な財産権として法的に構成できるか,まだ未解決の問題が多い。
→肖像権
執筆者:大家 重夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報