ギリシア神話で,アポロンに愛されたアミュクライ(スパルタ近くの町)の美少年。アポロンと円盤投げに興じていたとき,アポロンの投げた円盤にあたって死んだ。一説では,少年の愛をアポロンと競って敗れたゼフュロスZephyros(〈西風〉)が,意趣返しに風をおこして円盤の方向をそらしたためともいう。このとき,大地をぬらした少年の血から,花弁にAI AI(ああ!)の文字をつけた花ヒアシンス(実際にはアイリスの一種がそのような花弁をもつ)が生じたと伝えられる。特異な接尾辞(-nth-)をもつヒュアキントスの名は,本来はギリシア先住民族のもので,おそらく彼は死んでよみがえる穀物の精であったと考えられているが,その崇拝がのちに到来したアポロンにとって代わられた事実の説明として,上記の神話が生じたのであろう。アミュクライをも含めて広くドリス人の町々では,毎年夏至のころにヒュアキンティアHyakinthia祭が行われていた。
執筆者:水谷 智洋
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…しかしながら,農民はそれだけでは満足せず,森や山から樹霊を招来するばかりでなく,みずからの耕している大地の中に新しい神を設定する。例えば古代ギリシア人はヒュアキンティアHyakinthiaなる祭りを行ったが,この祭りは,アポロンの誤って投げた円盤があたって死んだ美少年ヒュアキントスを記念する春祭である。ところで,このヒュアキントスは実はヒアシンス,あるいは類似の植物を人格化,神格化したものであると考えられる。…
…栽培されるヒアシンスはヒアシンス・オリエンタリスH.orientalis L.から改良されたものであるが,ほかにも数種が栽植されている。【水野 嘉孝】
[神話]
ヒアシンスの名称はギリシア神話に出てくる美少年ヒュアキントスにちなむ。ヒュアキントスはスパルタのアミュクライ市で生まれたが,その美しさのゆえにアポロン神に愛され,いっしょに円盤投げに興じていたとき,アポロンの投げた円盤があやまって頭にあたり,落命した。…
※「ヒュアキントス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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