日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒンドゥー教の神々」の意味・わかりやすい解説
ヒンドゥー教の神々
ひんどぅーきょうのかみがみ
*は、別に本項目があることを示す。
ガネーシャ Gaeśa
シバとパールバティーの間に生まれた智慧(ちえ)と幸運の神。象の頭をもち、鼠(ねずみ)に乗る。現代のヒンドゥー教においては、富や愛をもたらす幸福の神として、民衆に人気がある。日本では聖天(しょうでん)または歓喜天(かんぎてん)として伝えられている。
カーマ* Kāma
愛の神。矢を放つことにより愛欲をもたらす。元来「カーマ」という語は「愛欲・欲望」を意味する。
クベーラ* Kuvera
財産の神。ガネーシャと並んで民衆に人気がある。太鼓腹(たいこばら)をして財布と棍棒(こんぼう)を手にしている。日本では毘沙門天(びしゃもんてん)。
クリシュナ Ka
ビシュヌの第八番目の化身(けしん)。紀元前7世紀ころ北インド西部に実在した人物が神格化されたといわれる。ビシュヌと一体視され、さまざまなクリシュナ伝説が生まれ、ヒンドゥー教の神話のなかで活躍がもっとも著しい。
サラスバティー* Sarasvatī
古くはことばの女神バーチェVācと同一視され、ベーダ期以降は学問・英知・音楽の女神。さらにのちにはブラフマーの妻となる。元来は川の名前と思われる。日本では弁才天。
シバ* Śiva
ビシュヌと並ぶヒンドゥー教の代表的な神。「吉祥(きっしょう)」を意味する。ブラフマー、ビシュヌ、シバの三神がそれぞれ宇宙の創造、維持、破壊をつかさどると考えられた。その特徴、性格は「シバの千の名前」においてさまざまに列挙されている。
スカンダ* Skanda
戦争の神。シバとパールバティーの子といわれる。病気や災難の原因ともされ、盗人の神でもある。日本では韋駄天(いだてん)。
ハヌマーン Hanumān
猿の神。ラーマ王子が妻シーターを悪魔ラーバナから助け出すのに協力したので有名。無限の尾をもち、空中を飛び回り、その活躍にラーマから永遠の命と永遠の若さを与えられた。
パールバティー Pārvatī
シバの妃(ひ)。「山に住む女神」の意味。シバの妃の名前は後世数百を超すといわれるなかで、ウマーと並んでもっとも有名。慈愛に満ちた姿が描かれた反面、時代とともに恐ろしさを含むものともなった。
ビシュヌ* Viu
シバと並ぶヒンドゥー教の代表的な神。彼の化身は有名で、一般的には魚、亀(かめ)、猪(いのしし)、人獅子(ひとじし)、小人バーマナ、パラシュ・ラーマ、ラーマ、クリシュナ、仏陀(ぶっだ)、カルキンの10の化身がよく知られている。
ブラフマー* Brahmā
中性原理のブラフマンが擬人化されたもので、世界の創造をつかさどるとされた。叙事詩の時代には、シバ、ビシュヌに命令する最高神の地位を占めたが、時とともに、両者にその地位をとってかわられた。
ヤクシャ Yaka
クベーラの従者。彼の庭と財産を保護するのを任務とした。ジャイナ教や仏教では地域の守護者とされた。
ヤマ* Yama
冥界(めいかい)の主、あるいは地獄の王。『リグ・ベーダ』では祖霊たちの主として冥界に君臨した。後世になるにつれ、死神そのものと考えられるようになった。
ラクシュミー* Lakmī
幸運、繁栄の女神。叙事詩の時代においてビシュヌの妻とされるようになった。ビシュヌは10の化身を有するが、彼女もまたそれにふさわしい姿に変わった。仏教における吉祥天(きちじょうてん)。
ラーマ Rāma
ビシュヌの第七番目の化身。叙事詩『ラーマーヤナ』における活躍でとくに有名。魔王ラーバナとの戦いでは、彼に捕まった妻シーターを、猿神ハヌマーンなどの援助によってランカー島より奪還した。
[谷沢淳三]