材料の機械的性質の一つ。その測定が比較的容易なことから、工業的にとくに重宝されている。物が硬い・軟らかいということは日常的にもしばしば経験することでありながら、これを物理学的に厳密に定義することはむずかしい。硬さを初めて定量的に表示したのは、1722年に引っかき法で硬さを測定したフランスのレオミュールといわれている。1822年には、鉱物の硬さを表す有名な「モースの尺度」がドイツのF・モースによって考案された。
一般に工学上の硬さの定義は、「物体の硬さとは、それが他の物体によって変形を与えられようとするときに示す抵抗の大小を表す尺度である」とされている。この定義からもわかるように、硬さはきわめて広範囲の内容を包含するものであって、その物体の弾性係数、ポアソンPoisson比、降伏点、破断強さ、粘さともろさ、展延性などの材料特性、さらに摩耗に対する抵抗、引っかきに対する抵抗などの工業的に重要な性質とも関連している。したがって硬さの測定には、変形の与え方や抵抗の表示法により、これらの性質のいくつかととくに関連性の強い尺度の数値を与えるように考案された多様な硬さ試験法があり、実用化されている。すなわち、複雑な内容をもつ硬さは、むしろそれらの測定法によって定義されているのが現状であり、硬さの表示には、その測定法を併記しなければ無意味である。
現在、工業的に使用されている硬さは、押込み硬さ、反発硬さ、引っかき硬さの3種類であり、それぞれの硬さにもいくつかの試験法がある。このなかでもっとも実用化されているのは押込み硬さであり、試験面にくぼみをつくり、そのときの荷重とくぼみの大きさから硬さを算出している。
[林 邦夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
【Ⅰ】材料の変形に対する抵抗の概念的な表現.機械的性質には相対的な表現が多いが,硬さは完全な相対値で,材料面をほかの物体で引っかいたり,押し付けたり,衝突させたとき,物体が材料に与える変形の程度によって表す.その変形が大きいと材料はさらに硬化するので,測定された硬さは同一材料でも試験機,測定条件により異なる.各測定方法によって求めた値は,近似的に一定の関係が見いだされるが,測定方法に理論的関連はないので,この関係があらゆる物質に成り立つ保証はない.[別用語参照]硬さ試験【Ⅱ】鉱物の硬さはモース硬さで表す.ドイツの鉱物学者F. Mohs(1773~1839年)は,硬さの標準として次の10種類の鉱物を選んだ.(1)滑石,(2)セッコウ,(3)方解石,(4)蛍石,(5)りん灰石,(6)正長石,(7)水晶,(8)黄玉,(9)鋼玉,(10)ダイヤモンド.これで順次引っかいて,硬度未知の鉱物の硬さを定性的に知ることができる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…機械工学では〈かたさ〉を用い,鉱物の硬度はモース硬度で表す。硬さモース硬度計
[水の硬度]
水中のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの溶存量を示す尺度。厚生省制定の〈上水試験方法〉(1978)では,これらのイオン量をCaCO3量に重量換算し,水1lあたりのmgで表す。以前はppmで示した時もあり,またセッケンの泡立ち能力の差で判定したこともあった。硬度には,(1)総硬度,(2)カルシウム硬度,(3)マグネシウム硬度,(4)非炭酸塩硬度(永久硬度),(5)炭酸塩硬度(一時硬度),の5種がある。…
…材料試験の一種で,材料の硬さを測定するための試験。他の材料試験より実施が容易であり,試験に際しては検査面に小さなくぼみをつけるだけなので製品の検査に適用できる場合も多く,また得られた硬さ値から引張強さなど材料の強さを示す他の定数を推定できる場合も多いので,工業上重要な試験法となっている。…
※「硬さ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新