知恵蔵 「ビットコイン消失事件」の解説
ビットコイン消失事件
マウントゴックスは、かつてはカードゲームのオンラインでのカードを売買する交換所であったが、ビットコインが注目され始めたことに着目し、10年よりビットコイン交換所を営み始めた。アニメファンとして来日していたマルク・カルプレスが、これを11年に買収し、ブームに乗じて急成長。13年には世界のビットコイン取引の7割を占めるようになったという。同社の払い戻しは、不可解な理由でしばしば遅滞するなどしていたが、ビットコイン人気を背景に、全般的にはドルなどの通貨から購入する流れが大きく、ほころびは目立たなかった。しかし、13年末から14年にかけて、同社の払い戻しが正常に行われなくなり、取引が停止し破綻に至った。
この事件により、ビットコインに対する信頼は大きく揺らいだが、マウントゴックスがオンライン上で管理していたことに問題があり、別の方法で保管すれば安心だとして取り扱いを継続する交換所がある。また、実体的な価値を有しない仮想通貨であることなどから、いくつかの国では利用が禁止されているが、決済手段として認める企業も限定的ながら存在するという。日本の法制度上は通貨でもなければ有価証券でもなく、有体物ではないため、マルク・カルプレスをどのように裁くのか、被害者が救済を受ける手段はあるのかなど、様々な課題が残されている。
(金谷俊秀 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報