インターネットやケーブルテレビなどの接続網を通じ、利用者がいつでも好きな時間に希望する映像コンテンツの配信を受けて視聴できるサービス。オン・デマンドとは「要求に応じて」を意味する英語である。略称VOD。映像配信を実現するメディアサーバーやネットワークをVODシステムと総称する。このシステムは映画や放送番組のコンテンツ配信だけでなく、テレビ電話やテレビ会議、リアルタイムも含めたインターネット放送などの視聴にも利用されている。ビデオ・オン・デマンドを視聴する方法は、映像配信サービス会社から提供される受像装置STB(セットトップボックス)をテレビに接続して出力する方法が一般的で、スマートテレビなどにはこの機能を内蔵した機種がある。映像データの配信方法は2種類で、STBにコンテンツ全体をダウンロードしてから見るダウンロード視聴と、ダウンロードしながら同時に見られるストリーミング視聴があり、事業者によって仕様が異なる。また、課金方法は一定の料金で視聴制限を受けずに見られる月額料金制と、一つのコンテンツ視聴ごとに課金されるペイ・パー・ビューpay per viewがある。
ビデオ・オン・デマンドは、映像をデジタル化するためのMPEG(エムペグ)規格が実用化されたことにより、1990年代初頭から世界各地で研究が始まった。1994年に国際的な標準化業界団体としてDAVIC(Digital Audio-Visual Council)がスイスで発足し、ISO規格が策定されたものの、ネットワークやサーバー、コンテンツ供給などのコスト面の問題が打開できずに、いったんVODへの熱気は衰えた。しかし、2000年以降にADSLを中心としたブロードバンド回線(広帯域通信網)が一般家庭にまで普及すると、放送局やIT系企業、コンピュータや家電メーカーによる新たなサービスや対応製品の開発が進みはじめ、事業として成立するケースが出始めた。その後、急速に普及したスマートフォンやタブレット型端末、パソコンなどの情報端末で視聴したり、端末をテレビと無線LAN(ラン)などで接続し、受信した映像コンテンツをテレビに映し出して見たりすることも簡単にできるようになった。このような情報端末を介するビデオ・オン・デマンドサービスは国内外で急速に広がっており、事業者間の競争も激しくなっている。
[編集部]
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