電波による無線送信ではなく、ケーブルを用いてテレビジョン放送などの情報を伝送するシステム。ケーブルテレビジョン、または有線テレビジョン放送ともいう。一つのアンテナで受信した信号を分配し、ケーブルを通して複数の受信者に分配するシステムである。アパートやマンションなどの集合住宅で、居住者ごとに個別のアンテナを設置する煩わしさを避ける目的で実施されたのが始まりである。その後、山間部など電波が届きにくくテレビの受信が困難な地域の難視聴対策用に発展した。この場合、受信者は同一建物内に限らず対象とする地域内の個別住宅まで拡大される。難視聴対策を主目的にしたCATVは、1954~1955年(昭和29~30)伊香保(いかほ)温泉(群馬県)で東京のテレビ放送を見るためにつくられたのが最初で、その後の実施例として山梨県甲府市や、長野県の諏訪(すわ)湖周辺市町に設けられた施設、筑波(つくば)学園都市のコミュニティケーブルサービスなどがあげられる。一方、都市部においても、起伏の多い日本の地形のため部分的に難視聴地域が発生しており、また都市の発展とともに高層ビルが多く建てられると電波がこれに遮られて難視聴地域が拡大され始めた。このため、1983年にマルチチャンネルCATVが認可されると、テレビの難視聴対策とともに多様なサービスを供給するマルチチャンネル型のCATV会社が都市部に開設されるようになった。これらは都市型ケーブルテレビとよばれる。
CATVのケーブルとして初めは同軸ケーブルが用いられた。同軸ケーブルは非常に広い伝送帯域をもつため、テレビの放送波を受信して再送信するだけでなく、地域を対象にしたお知らせ、コマーシャル、映画、スポーツ中継、特別番組などを独自に有料で提供するような形態も取り入れられるようになった。電波にはないケーブルの利点として、送信者から視聴者に情報を送信するだけでなく、視聴者から送信者に情報を送る、双方向型システムを構成できることがあげられる。双方向型システムでは、視聴者が送信者側に番組に関するリクエストや、身近な地域情報などを送ることができ、きめ細かいサービスが期待できる。
2000年(平成12)ごろになると、衛星テレビ放送や地上波テレビ放送のデジタル化に対応してCATVのデジタル化が検討され、2004年から大都市を皮切りにデジタルCATVの運用が開始された。使用するケーブルも同軸ケーブルにかわって光ファイバーケーブルが主力になった。光ファイバーケーブルは同軸ケーブルよりもはるかに広い伝送帯域をもち、超高速のデータ伝送ができる。これによりCATVのサービスは、デジタル技術と光ファイバーケーブルの利点を生かして、地上波テレビジョン、BSテレビジョン、CSテレビジョンの再送信にとどまらず、自主放送、FMラジオ(FM=周波数変調frequency modulation方式を使ったラジオ放送)の再送信、インターネット接続、光電話(IP電話。IP=インターネットプロトコルInternet Protocol)接続など、多角的、総合的になっている。
CATVに関する法律として、1973年「有線テレビジョン放送法」が従来の「有線電気通信法」とあわせて適用されていたが、これらは2011年に廃止され「放送法」(昭和25年法律第132号)に統合されている。
都市型ケーブルテレビの事業者として2012年現在、ジュピターテレコム(J:COM(ジェイコム))、ジャパンケーブルネット(JCN)、TOKAIコミュニケーションズ(@T COM(アットティーコム))などがある。
[吉川昭吉郎]
『戸村弘著『CATV事業のすべて』(1997・日本図書刊行会)』▽『羽鳥光俊監修、吉崎正弘他共著『コミュニティメディアCATVの可能性』(2000・ぎょうせい)』
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…テレビ電波の届きにくい山かげあるいはビルかげの受信世帯のために,受信良好地点に共同でアンテナを設置し,そこで受信した良好な電波を同軸ケーブルで各家庭に分配する共同アンテナテレビジョンが発祥である。これはCATV(Community Antenna Television)あるいはMATV(Master Antenna Television)という。このCATVは地上放送のVHFテレビ,UHFテレビ,FM放送,および衛星放送(BS),通信衛星(CS)放送の再送信,さらに事業者が制作・購入した自主番組も送出する大規模なケーブルテレビに発展した。…
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