ビビエーナ家(読み)ビビエーナけ

改訂新版 世界大百科事典 「ビビエーナ家」の意味・わかりやすい解説

ビビエーナ家 (ビビエーナけ)

舞台装置家,建築家を輩出したロココ時代イタリアの家系。ガッリ・ダ・ビビエーナGalli da Bibiena家ともいう。フィレンツェ近郊ビビエーナから出てボローニャ本拠に,一族の3代8人が17~18世紀のヨーロッパ各宮廷で活躍し,歌劇祝典,舞踊会,葬礼用に多くの装置を考案,制作した。舞台は現存しないが,背景建築の隅部を前面に出し,観客がその隣接二面を見るように設定された2点透視画法による構成を特徴としていたことが知られる。これは,貴賓席に視点を置いた1点透視法構成にもとづく従来の舞台には見られない迫力と変化を生む画期的な手法であり,〈シェーナ・ペル・アンゴロscena per angolo(対角背景)〉とよばれて18世紀の舞台装置の基本形式となった。一族のうち,フェルディナンドFerdinando B.(1657-1743)はパルマ公に仕え,北イタリア各地とローマ,バルセロナ,ウィーンで活動,《幾何学と透視画法にもとづく市民建築》(1711)と題して劇場舞台の作例集を著し,ハプスブルク家お抱えの劇場建築家となった。その弟フランチェスコFrancesco B.(1659-1739)はマントバ公に仕え,舞台構成以外にウィーンの大宮廷劇場(1704),ナンシーの宮廷劇場(1708),ベローナの楽劇場(1731)を設計したが,いずれも現存しない。フェルディナンドの次男ジュセッペGiuseppe B.(1696-1757)は一族の作品として唯一現存するバイロイト歌劇場の内装を手がけた。その弟アントニオAntonio B.(1700-74)はオーストリアハンガリーチェコスロバキアで活動,イタリア国内の作品ではロココの過飾から質実さへと向かう過渡的傾向を示している。フランチェスコのもう一人の息子,アレッサンドロAlessandro B.(1687-1769)はマンハイムで建築設計に携わり,ジュゼッペの子カルロCarlo B.(1728-87)は北欧にまで足跡を残したが,その死とともに家系は断絶する。一族の作品を描いた200葉を超える素描,劇場建築の模型等が残る。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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