ビャクブ(その他表記)Stemona japonica Miq.

改訂新版 世界大百科事典 「ビャクブ」の意味・わかりやすい解説

ビャクブ
Stemona japonica Miq.

薬用に栽培されるビャクブ科のつる性の多年草。種小名はjaponica(日本の)と名付けられているが,中国浙江省,江蘇省安徽省)の原産で,日本に野生はない。中国名は百部。茎は上部がつる性となり,他のものに巻きついて高さ約2mに及ぶ。葉は3~4枚ずつ輪生し,卵状楕円形,先端はやや尾状にとがり,基部は円い。質厚く5平行脈が目だつ。葉身は4.5~6cmで,3~4cmの細長い葉柄がある。花は7月ごろ,葉腋(ようえき)に1~2個ずつつく。花柄はしばしば葉柄と合着しており,花が葉身のつけ根から出るように見える。花被は4枚で淡緑色披針形で長さ約1.2cm。おしべは4本で中央に集まり,葯隔の先端につの状の付属突起があり,紫色を帯びる。果実は蒴果(さくか),卵形で長さ1~1.5cm,熟すと二つに裂ける。種子は楕円形で紫褐色。地下には短い根茎があり,この根茎から多肉質の紡錘根を多数つける。この紡錘根は近縁種タチビャクブS.sessilifolia Miq.,タマビャクブS.tuberosa Lour.の紡錘根とともに漢方で薬用とされ,咳止めやセンチュウ駆除の効果があるといわれる。

 ビャクブ属は約10種を含み,中国からヒマラヤ東南アジアに分布する。

 ビャクブ科は4属約30種からなり,ユリ科近縁だが,4数性で子房が1室であることから区別される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビャクブ」の意味・わかりやすい解説

ビャクブ
びゃくぶ / 百部
[学] Stemona japonica Miq.

ビャクブ科(APG分類:ビャクブ科)の多年生つる植物。中国の浙江(せっこう)省、江蘇(こうそ)省、安徽(あんき)省に分布し、日本への渡来は江戸時代である。茎がつる状で他物に巻き付くのでツルビャクブともいう。葉は3~4個が輪生し、葉柄は長さ1.5~3センチメートル。葉身は卵形ないし卵状披針(ひしん)形で、長さ3.5~5センチメートル、幅1.8~2.4センチメートル、先は長くとがる。葉脈は5~7本が平行に走る。5月から7月にかけて葉腋(ようえき)に1個ずつ花をつけるが、花柄の下部は葉と合生するので、あたかも葉身の中央から花柄が出ているようにみえる。花被(かひ)は4個で長さ12ミリメートルの披針形、淡緑色で、花は半開し、やがて反曲する。雄蕊(ゆうずい)(雄しべ)は4個で紫色を帯びる。子房は甚だ小さい。地下に長さ3~8センチメートルの紡錘形の根を多数つける。

 漢方では根を百部といい、鎮咳(ちんがい)、駆虫、殺虫剤として肺結核、気管支炎、百日咳(ぜき)の治療のほか、蟯虫(ぎょうちゅう)、シラミの駆除に用いる。また皮膚病やかゆみの治療にも使用する。なお、中国の浙江、江蘇、安徽、山東、河南の諸省に分布し、茎が直立してつる状にならないタチビャクブS. sessilifolia Miq.も江戸時代に渡来した植物で、根を同様に薬用とする。

[長沢元夫 2018年10月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビャクブ」の意味・わかりやすい解説

ビャクブ(百部)
ビャクブ
Stemona japonica

ビャクブ科の多年草。熱帯アジア原産といわれ,江戸時代に中国から渡来した薬用植物。根は紡錘状に肥厚して小さい芋の集合のようである。茎は根もとでは直立するが,上部はつる状となって他物に巻きつく。葉はヤマノイモに似て,夏に緑色の花をつけるがおしべが紫色で目立つ。根を乾燥して駆虫剤,鎮咳剤として用いる。

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