ビャクブ(読み)びゃくぶ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビャクブ」の意味・わかりやすい解説

ビャクブ
びゃくぶ / 百部
[学] Stemona japonica Miq.

ビャクブ科(APG分類:ビャクブ科)の多年生つる植物中国浙江(せっこう)省、江蘇(こうそ)省、安徽(あんき)省に分布し、日本への渡来江戸時代である。茎がつる状で他物に巻き付くのでツルビャクブともいう。葉は3~4個が輪生し、葉柄は長さ1.5~3センチメートル。葉身は卵形ないし卵状披針(ひしん)形で、長さ3.5~5センチメートル、幅1.8~2.4センチメートル、先は長くとがる。葉脈は5~7本が平行に走る。5月から7月にかけて葉腋(ようえき)に1個ずつ花をつけるが、花柄の下部は葉と合生するので、あたかも葉身の中央から花柄が出ているようにみえる。花被(かひ)は4個で長さ12ミリメートルの披針形、淡緑色で、花は半開し、やがて反曲する。雄蕊(ゆうずい)(雄しべ)は4個で紫色を帯びる。子房は甚だ小さい。地下に長さ3~8センチメートルの紡錘形の根を多数つける。

 漢方では根を百部といい、鎮咳(ちんがい)、駆虫、殺虫剤として肺結核、気管支炎、百日咳(ぜき)の治療のほか、蟯虫(ぎょうちゅう)、シラミの駆除に用いる。また皮膚病やかゆみの治療にも使用する。なお、中国の浙江、江蘇、安徽、山東河南の諸省に分布し、茎が直立してつる状にならないタチビャクブS. sessilifolia Miq.も江戸時代に渡来した植物で、根を同様に薬用とする。

[長沢元夫 2018年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビャクブ」の意味・わかりやすい解説

ビャクブ(百部)
ビャクブ
Stemona japonica

ビャクブ科の多年草。熱帯アジア原産といわれ,江戸時代に中国から渡来した薬用植物。根は紡錘状に肥厚して小さい芋の集合のようである。茎は根もとでは直立するが,上部はつる状となって他物に巻きつく。葉はヤマノイモに似て,夏に緑色の花をつけるがおしべが紫色で目立つ。根を乾燥して駆虫剤,鎮咳剤として用いる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android