チンパンジーより少し小さく,ほっそりとした体をもつ霊長目オランウータン科の類人猿。チンパンジーと同属異種とする説とその一亜種に分類する説がある。ピグミーは小人の意。別名ボノボ。アフリカのザイール川左岸の熱帯降雨林中に生息する。全身黒くつややかな毛で覆われ,赤みを帯びた口唇をもつ。耳の上にひさしのように突き出た頭髪,ふさふさしたほお毛,生まれたときから黒い顔,はげがないことなどで,チンパンジーと容易に区別できる。脚と腕の長さがほぼ等しく,犬歯も含めた前歯部が小さく顔面がより短いなどの特徴もある。形態上の特徴の多くはチンパンジーの幼児的形質に一致するもので,このことをめぐって多くの議論がある。体重は25~48kg。性差は小さく雌は雄の80~90%の体重である。
雑食性で果実,木の葉,葉の髄のほか,昆虫,ミミズをよく食べ,まれに小さな脊椎動物も食べる。樹上生活にも地上生活にもよく適応しており,また湿地も含めた多雨林中のあらゆる植生を利用する。雌雄ほぼ同数の60~120頭からなる単位集団を形成し,ふだんはいくつかの遊動集団に分かれて生活している。遊動集団には特定のメンバーが集まる傾向がある。母と息子,雌どうし,雌雄間の結びつきが強く,チンパンジーと異なって雄どうしの結びつきは弱いが,全体として個体間の許容度が高く凝集性の強い社会をつくっている。単位集団どうしは拮抗的だがその間の闘争は激しくはない。また単位集団間を若い雌が移籍する。
行動上の特性は性行動にある。雌雄間では交尾が,雌どうしでは抱き合って性器をこすり合う行動が頻繁に見られ,これらがあいさつや相手から食物を得る手段として機能している。雄どうしではマウンティング,しり(尻)つけが緊張緩和行動となっている。雌は出産後1年以内に再び発情し,月経周期は約1ヵ月であるが,発情はそのうちの3週間以上にわたって継続する。妊娠期間は約9ヵ月。国際保護獣で動物園での飼育はきわめてまれである。
執筆者:黒田 末寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「ボノボ」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…テナガザル類はいずれも各1頭の雌雄とその子どもからなる集団をもっている。オランウータンの社会は安定した集団をもたない単独生活者の社会であるが,ゴリラは単雄複雌の集団を基本としており,チンパンジーとピグミーチンパンジーは複雄複雌の集団をもっている。類人猿に見られるこれらの集団は外婚の単位であり,近い血縁関係にある性的関係が回避されていることも知られている。…
※「ピグミーチンパンジー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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