日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボノボ」の意味・わかりやすい解説
ボノボ
ぼのぼ
bonobo
[学] Pan paniscus
哺乳(ほにゅう)綱霊長目ショウジョウ科の動物。ピグミーチンパンジーともよばれる。もとチンパンジーの1亜種とされていたが、1933年クーリッジHarold J. Coolidgeが独立種として記載した。コンゴ(ザイール)川左岸の低地多雨林に分布する。チンパンジーより一回り小形で、体重の平均は35キログラム。本種は、チンパンジーに比し、顔の色がより黒く、口顎(こうがく)部の突出が少なく、耳殻が小さく、頭が丸く、額が高い。これらは小児的特徴で特殊化の度合いが少なく、類人猿とヒトの共通の先祖に近いとする説がある。体格上の性差はチンパンジーより少ないが、発情した雌の性皮は顕著な腫脹(しゅちょう)をみせる。1975年(昭和50)ごろより、加納隆至(たかよし)らによって生態学的調査が進められた。植物食を主とするが、ミミズや小動物も食べ雑食性。チンパンジーは水を嫌うが、本種は半身水につかってイグサを採食するのが観察されている。集団は60~100頭からなり、性比はほぼ1対1、遊動域の面積は20~40平方キロメートルである。下位単位としてのサブグループが認められているが、その社会学的意義は明らかにされていない。性成熟に達した雌は生まれ育った出自集団を離れ、他集団に移籍する。本種の際だった特色は性的行動にあり、交尾のほかに、雌どうし、雄どうしで性器を接触させる行動が頻繁にみられ、それに食物の物ごいや分配のエピソードが複雑に絡む。1産1子で、出産間隔は約5年。
[伊谷純一郎]
『黒田末寿著『ピグミーチンパンジー――未知の類人猿』(1981・筑摩書房)』▽『加納隆至著『最後の類人猿――ピグミーチンパンジーの行動と生態』(1986・どうぶつ社)』