ソ連の小説家。トベリ県(現ロシア連邦トベリ州)の教師の家に生まれ、少年時代から極東の革命闘争に参加、その体験を描いた短編『流れに抗して』(1923)と中編『氾濫(はんらん)』(1924)でデビュー。長編『壊滅』(1927)では極東地方での白軍・干渉軍との困難な戦いのなかで、ついに全軍離散の運命をたどる一パルチザン部隊の悲劇を語りながら、共産主義者の不屈の隊長レビンソンはじめ、さまざまな過去をもつ隊員群像をトルストイ流の心理的リアリズムの手法で描き分け、革命の事業への確信を訴えて一躍ソビエト文学の第一人者となった。早くから文学運動の論客としても活躍、ラップの指導者の1人。ソ連作家同盟の設立後は社会主義リアリズムの理論づけ、文学行政面で腕を振るった。作家としては大成せず、エンゲルスの『家族、私有財産および国家の起原』を小説化しようとした野心作『ウデゲ族の最後の者』(1929~36)は未完に終わり、第二次世界大戦後は長編『若き親衛隊』を発表したが、最後の長編『鉄鋼』も中途で挫折(ざせつ)した。長く作家同盟書記長を務め、文学官僚の代表と目された責任感が、スターリン批判後彼をアルコール中毒、自殺に追いやった原因とみられる。
[江川 卓]
『蔵原惟人・山村房次訳『壊滅・氾濫』(1966・新日本出版社)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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