改訂新版 世界大百科事典 「フィリオクエ」の意味・わかりやすい解説
フィリオクエ
filioque
キリスト教で三一神の第3のペルソナ(位格)である聖霊の発出をめぐって,ニカエア・コンスタンティノポリス信条に挿入された〈子からも〉を意味するラテン語。西方教会では聖霊が父と子の両者から発出するとして,〈父から出る〉とのみ記す信条に,中世初期から〈フィリオクエ〉を補っていた。文献上の初出は第3回トレド会議(589)であるが,これを後代の加筆とする説も有力。9世紀ごろからフランク教会では典礼中の信条に〈フィリオクエ〉を挿入していた。ローマ教会は,教義としての〈フィリオクエ〉を認めながらも,これの信条への付加を禁じたエフェソス公会議(431)規定違反とする東方教会の主張を考慮して,信条に挿入することは控えていたが,11世紀からそのたてまえをくずした。東方教会は,手続論のみならず,教義上も聖霊は父からのみ発出すると主張して,西方教会の立場を批判,これが東西両教会分離(1054)の教義上の対立点となった。
執筆者:森安 達也
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