日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペルソナ」の意味・わかりやすい解説
ペルソナ
ぺるそな
persona
人格、位格を表すラテン語で、正確な発音はペルソーナ。元来、俳優が頭部にすっぽりかぶる仮面の意。転じて俳優が演ずる役割、役柄、登場人物をさし、さらに人物、個人、性格、人格を意味するに至る。
とくに古代キリスト教神学は、テルトゥリアヌスTertullianus(160ころ―220ころ)以来、御父と御子と聖霊の三者が一なる神であるとの三一神(三位(さんみ)一体the Trinity)の信仰を説明する場合の術語としてこれを採用した。4世紀に確立した正統的な三一神論によれば、御父、御子、聖霊は共通の本質として神性をもつとともに、それぞれ他から区別される個体性をもつ。すなわち、御父においては、自らは生まれず、御子を生み、聖霊を発出させること、御子においては、御父から生まれること、聖霊においては、御父から発出することがペルソナとしての固有性である。このような意味で三一神の教義は、「三つのペルソナ、一つの本質」tres personae, una substantiaという定式で表現される。この場合ペルソナは、ギリシア語のプロソーポンprosōpon、あるいはヒュポスタシスhypostasisにほぼ対応し、具体的な個別存在を意味している。さらに後代の神学では、ペルソナは神の存在様式modus essendi, Seinsweiseとして説明されたり、近代的な人格観念と結び付けられることがあった。
日本語では「位格」と訳されるのが普通であるが、「格身」などの訳語もある。
[水垣 渉]