フェニル酢酸(読み)フェニルさくさん(その他表記)phenylacetic acid

改訂新版 世界大百科事典 「フェニル酢酸」の意味・わかりやすい解説

フェニル酢酸 (フェニルさくさん)
phenylacetic acid


α-トルイル酸ともいう。酢酸メチル基の水素原子一つをフェニル基C6H5-で置換した構造をもつ化合物。ハッカ油やバラ油,ネロリ油などに遊離酸またはエステルとして存在する。融点78℃,沸点227℃の特異な臭いをもつ白色鱗片状結晶。冷水,石油エーテルに難溶,熱水,アルコール,エーテル等の有機溶媒可溶。水溶液は弱酸性を示し,酸解離指数pK=4.312(25℃)。種々の金属と塩をつくる。通常のカルボン酸と同じく,エステル,酸アミド,酸塩化物,酸無水物をつくり,有機合成に用いられている。塩化ベンジルにシアン化カリウムを作用させて得られるシアン化ベンジルを,硫酸または水酸化ナトリウム水溶液で加水分解して合成される。

 おもにエステルとしてセッケン,クリーム,タバコなどの香料に用いられ,インドールや麝香(じやこう)の代用品として香水にも使われている。医薬品,農薬,殺虫剤,植物生長調節剤などの合成原料としての用途もひろい。覚醒剤の原料となりうるため,その取扱いは覚せい剤取締法により規制されている。
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化学辞典 第2版 「フェニル酢酸」の解説

フェニル酢酸
フェニルサクサン
phenylacetic acid

benzeneacetic acid.C8H8O2(136.15).C6H5CH2COOH.α-トルイル酸ともいう.はっか油,ばら油,ネロリ油などの植物精油中に,遊離またはエステルの形で存在する.合成では,塩化ベンジルをシアン化ベンジルにかえ,加水分解によってつくられる.結晶.融点76 ℃,沸点265 ℃,144 ℃(1.6 kPa).1.091.エタノール,エーテルあるいは熱水に可溶.おもにエステルの形でせっけんの香料として用いる.覚せい剤合成原料にも使われる.LD50 > 5000 mg/kg(ウサギ,経皮).[CAS 103-82-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「フェニル酢酸」の解説

フェニル酢酸

 C8H8O2 (mw136.15).

 フェニルアラニンの異常代謝産物の一つ.フェニルケトン尿の患者の尿中に排泄される.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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