フォル(その他表記)Fol, Hermann

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォル」の意味・わかりやすい解説

フォル
Fol, Hermann

[生]1845.7.23. パリ
[没]1892
フランス生れのスイスの動物学者。動物における細胞分裂過程に関する研究で,中心的な役割を果した一人。 1873年,ヒトデの細胞で紡錘糸を観察,その配列の仕方を磁力線のそれに比較した。この比較自体は科学的根拠のないものであったが,後年紡錘糸の機能が解明される際にヒントを与えた。 79年,受精卵の中で,卵子の頃からそなわっている核と精子に由来する核とが合体することを発見した。これは遺伝に関係する物質が核に含まれていると考えるための論拠を提供し,遺伝学,発生学に与えた影響は大きかった。また,卵に多数の精子を作用させると2個以上の精子の核が同一の卵に侵入する場合のあること,またそのような受精卵からは奇形の個体が生じることを観察し,染色体が形質決定の要因として働くと結論した。 T.ボベリによる研究のさきがけとなった。

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