改訂新版 世界大百科事典 「フクオウソウ」の意味・わかりやすい解説
フクオウソウ
Prenanthes acerifolia Matsum.
山地の林床にややまれにみられるキク科の多年草。本州,四国,九州の冷温帯に分布する。高さ60cm内外。全体に腺毛があり,葉や茎を切ると乳液が出る。葉は茎の下部に互生する。葉身は長さ約10cmで5~7裂し,カエデの葉に似る。地中に短い匍匐(ほふく)枝を出し,先端に球芽をつけ,栄養繁殖を行う。花期は8~9月ころ。茎の上部が分枝し,径1.5cmほどの薄紫色の頭花を多数つける。頭花は舌状花のみからなり,属の学名(prenes〈下垂した〉+anthes〈花〉)が示すように,下垂して咲く。瘦果(そうか)には冠毛があり,風散布される。和名は三重県北部の福王山(ふくおうざん)にちなむとする説と,この植物がもつ雰囲気から瑞兆を意味する福応が冠せられたとする説がある。フクオウソウ属Prenanthesはユーラシアおよび北アメリカに約30種あり,日本にはほかにオオニガナが近畿以東に自生する。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報