フサコケムシ
ふさこけむし / 房苔虫
[学] Bugula neritina
触手動物門苔虫(こけむし)綱唇口(しんこう)目フサコケムシ科の海産小動物。世界各地に分布し、岸壁、筏(いかだ)、漁網、船底などに密生して害を与える汚損生物の代表種で、コケムシ類のなかでは、おそらくもっともよく一般に知られている種である。個虫とよばれる小さな動物体が次々と無性的に出芽して、褐色から紫色の房状群体をつくる。暖海では群体は高さが10センチメートルを超えるほど大きく成長する。群体は次々と2分岐する枝からなり、各枝には体長0.7ミリメートルほどの個虫が2列に並ぶ。個虫はキチン質でできた虫室と23本前後の触手を備えた虫体とからなり、棘(とげ)などの付属物はいっさいもたない。生殖期になると各個虫の先端に卵室とよばれる球形の構造物がつくられ、幼生となって泳ぎだすまで受精卵がその中で育てられる。近縁種には、半透明または淡灰色で高さ3センチメートル以下の群体をつくるナギサコケムシBugula californicaや、汚損生物としてフサコケムシとともに、普通にみられるホソフサコケムシTricellaria occidentalisなどがいる。
[馬渡峻輔]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
フサコケムシ (総苔虫)
Bugula neritina
フサコケムシ科の外肛動物。日本一円から世界中の浅海に広く分布する。漁網,船底や海中の諸施設に付着し,高さ5cmほどの扇状やくさむら状の群体をつくる。群体は褐色~紫褐色で,多数に枝分れし,各枝には虫室が2列に並んでいる。各虫室の前縁両側は多少突出するがとげはない。また虫室の前縁に球形の卵室ができ,多いときには1列に並んだように見える。早朝,幼生が卵室から泳ぎだし,数時間後には他物に着生してしまう。いろいろな物に付着して群体をつくり害を与えるために汚損生物の一つにされている。近似種のナギサコケムシB.californicaは群体が透明で高さは3cm以下,ヒロフサコケムシB.flabellataは群体の枝が幅広く,個虫の前端に4本のとげがある。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フサコケムシ
Bugula neritina
触手動物門苔虫綱唇口目フサコケムシ科。扇状あるいは叢状の一見植物を思わせる高さ 15cmぐらいの紫褐色あるいは褐色の群体をつくる。群体は多数枝分れし,各枝は2列の個虫で成り立っている。幼生は緑褐色のトロコフォラで,早朝泳ぎだし,数時間後に他物に着生する。日本を含め世界各地の海にみられ,船底,岩壁,漁網などにも付着して大害を与えることがある。
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世界大百科事典(旧版)内のフサコケムシの言及
【コケムシ(苔虫)】より
… 世界で現生種は約4000種知られているが,有用種はまったくなく,すべてのものが有害であるといってよい。フサコケムシBugula neritina,チゴケムシDakaria subovoideaなどは船底について船速を遅くさせたり,冷却水路を狭めるなどの害を与え,またホンダワラコケムシZoobotryon pellucidumやセンナリコケムシBowerbankia imbricataは定置網の水通しを悪くしたり,養殖貝を殺すこともある。ヒラハコケムシMembranipora serrilamellaは有用海藻について品質を低下させ,大きな被害を与えている。…
【コケムシ(苔虫)】より
… 世界で現生種は約4000種知られているが,有用種はまったくなく,すべてのものが有害であるといってよい。フサコケムシBugula neritina,チゴケムシDakaria subovoideaなどは船底について船速を遅くさせたり,冷却水路を狭めるなどの害を与え,またホンダワラコケムシZoobotryon pellucidumやセンナリコケムシBowerbankia imbricataは定置網の水通しを悪くしたり,養殖貝を殺すこともある。ヒラハコケムシMembranipora serrilamellaは有用海藻について品質を低下させ,大きな被害を与えている。…
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