改訂新版 世界大百科事典 「フラティチェリ」の意味・わかりやすい解説
フラティチェリ
fraticelli
イタリア語で〈兄弟〉を示す語に由来し,繁栄した都市に流入した多くの托鉢僧を軽蔑的に示す言葉として使われるが,特にイエスと使徒の清貧を強調してフランチェスコ修道会から離反したうえ,その穏健派を承認した教皇とも対立して異端とされた宗派を示す。宗派としての統一,組織,教義は不明。指導者はアンジェロ・クラレーノが知られている。1317-23年のヨハネス22世の大教書にもとづいて,二つの教会論(肉的富裕教会=ローマ教会,霊的貧困教会=同派の教会),誤謬教会・聖職者の霊力と裁判権の否定,同派によるキリストの福音の完成等を説き,これが既成教会体制への挑戦と受けとられ,異端とされた。15世紀中葉に追放,逮捕,処刑されるものが多く出て,下火となった。ナポリ,シチリア,ウンブリア,マルケの諸地方に広がり,トスカナでは15世紀末まで下層民の間に存続した。
執筆者:佐藤 眞典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報