外洋上の海洋気象観測に使用する無人のブイで,自動的に観測を行い観測値を地上局に無線通報する。英語ではocean data buoyと呼ぶ。従来,海洋気象の観測は船舶によって行われており,通航する船舶は,風向,風速,気温,気圧,水温,目視観測による雲や波浪など気象情報を定時に通報する慣例である。しかし,これだけでは海域が限られ,悪天候時の資料が得られないなどのため,1950年代には,北大西洋の9点と北太平洋の4点で定点観測船による海上気象観測,高層観測,海洋観測を各国が分担して行っていた。日本は1947年から54年まで北方定点X(北緯39°,東経153°)を,そして1948年から南方定点T(北緯29°,東経135°)を担当していた。定点観測船の運航は50人近い人数と多大の経費を要するので,60年代になると各国ともブイロボットを開発するようになった。日本やアメリカが現在採用しているブイロボットでは直径6~12mの円盤状のブイをアンカーで海底に係留し,風向,風速,気温,気圧,露点,降水量,波浪,流向,流速,水温,ブイの位置と方位などを計測し,無線で直接に,あるいは静止気象衛星を経由して地上局に通報している。気象庁は70年に海洋観測ブイを日本海に,そして73年に外洋用の海洋気象ブイロボットを南方定点付近(北緯29°,東経135°30′)に設置した。97年度現在で5点で運用している。高層観測の一部も気象観測衛星の情報で得られるようになり,観測船による南方定点観測は1982年に廃止された。
執筆者:平 啓介
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…電磁波を利用した遠隔計測によって,海面温度,海上風,波浪,海面高度,海色などを観測する。海面の漂流ブイの追跡やブイロボットによる現場測定の資料の収集に利用する。広域の海洋を同時に観測できることが特徴である。…
※「ブイロボット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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