改訂新版 世界大百科事典 「ブルーメンバハ」の意味・わかりやすい解説
ブルーメンバハ
Johann Friedrich Blumenbach
生没年:1752-1840
ドイツの医学者,人類学者。ゴータの富裕な新教徒の家に生まれ,イェーナ大学で鉱物学,ゲッティンゲン大学で博物学に興味をもち,1775年ゲッティンゲンで医学の学位を得た。学位論文《人種の自然起源》は人類学の古典の一つ。76年ゲッティンゲン大学員外教授兼博物標本館管理者となり,78年医学部正教授に任命された。比較解剖学,比較生理学発展の基礎をつくり,また科学的人類学の創始者で,人類の一元性を強調し,黒人は白人よりも人間性が劣るという政治的・社会的偏見を激しく批判した。
彼は各人種の頭骨の形状の変異性に注目して,記載や計測により分類を試みて,今日の人類学や頭蓋学の基礎を築いた。多数の頭骨のコレクションは有名で,とくに上面観Norma verticalis(頭骨を上面から観察したときの形態)に着目した。そして今日三大人種といわれているモンゴロイドはほぼ方形,ニグロイドは狭頭,コーカソイドは前2者の中間に位置するとした。さらに,コーカサス(カフカス)地方で収集された若い女性の美しく均整のとれた頭骨から,白人種をコーカソイド(コーカサス人種)と呼んだが,人類学的には適当ではない。彼のいうコーカソイドは西アジアや北アフリカの住人であり,人種系統学的にも白人種の代表とは考えにくい。
執筆者:江原 昭善+本田 一二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報