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自然人類学 しぜんじんるいがくphysical anthropology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

自然人類学
しぜんじんるいがく
physical anthropology

形質人類学ともいう。人類の自然的側面について研究する学問。 19世紀前半まで人種の差異に関する研究が主であったが,化石人類が続々と発見されるようになった 19世紀後半から人類進化の研究が重要な位置を占めるようになり,生体学と骨学が研究の主流となった。今日ではさらに医学,先史学,文化人類学などの発達とも関連して,人類の進化や変異ばかりでなく,それらの動因となる適応機構にも研究領域は広がっている。したがって,形質人類学という呼称は,古くから一般的に使用されてはきたが,最近の研究傾向は形質という語の意味する以上の内容を含んでいるので,自然人類学という呼称に比べて適切な呼称とはいえなくなってきている。

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百科事典マイペディアの解説

自然人類学【しぜんじんるいがく】

形質人類学とも。文化人類学に対し,諸種の人間集団を生物としての側面から研究する学問。18世紀末ブルーメンバハにより比較解剖学の立場から基礎づけられた。人類集団の進化,発達,体質,血液型などを研究。
→関連項目人類学

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世界大百科事典 第2版の解説

しぜんじんるいがく【自然人類学 physical anthropology】

人類学を大きく分けたときの一分野である。ギリシア語の人間anthrōposと学問logosを語源とする人類学は,文字どおり人間の科学である。形質人類学とも呼ぶ。しかし今日では,医学,社会学,経済学,哲学,心理学など広い意味で人間の科学といえる学問は数多く,単に人間の科学というだけでは人類学の定義として不十分である。したがって,人類学がこれらの学問と異なる独立した科学であることを示すためには,人類学が何を目標とし,どのような人間を研究する学問であるか,はっきりさせる必要がある。

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大辞林 第三版の解説

しぜんじんるいがく【自然人類学】

生物としての人類を生物学の立場から研究する学問。人類の進化・変異・適応などが中心課題となる。形質人類学。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

自然人類学
しぜんじんるいがく
physical anthropology

人類を生物学的に研究する学問。とくにその進化、変異、適応の面を重視する。形質人類学、体質人類学ともよばれる。ドイツなどヨーロッパ大陸諸国では、人類学を狭義に解し、自然人類学をこれにあてるが、イギリス、アメリカでは人類学を広義に用い、自然人類学と文化人類学に分ける。日本では人類学は状況に応じて狭義、広義の両様に用いられている。[香原志勢]

歴史

古来人類は人類自体の由来に興味をもったが、それは長年荒唐無稽(こうとうむけい)な解釈に終わっていた。また異国人の風貌(ふうぼう)にも関心を抱き、とくに16世紀以降のヨーロッパ人は、世界各地の住民たちの変異の幅に驚嘆した。このような好奇心を土台に、人類を系統的に理解しようとする努力がなされた。18世紀なかばにリンネは、動物分類に際し人類を霊長類の一員とし、遅れてブルーメンバハは人類一元論を説くとともに、世界各地から多数の頭骨を集め、人種分類を提言した。科学的人類学の始祖といえる。19世紀前半には旧石器の存在が確認され、1856年にはネアンデルタール人が発見された。その3年後、ダーウィンの『種の起原』が刊行され、進化論が広く論ぜられた。以後、旧世界各地から化石人骨が続々と発見され、地質年代も明らかになり、人類進化は科学的事実として認められるようになった。今日では多数の化石人骨の集積があり、便宜上これらの化石人類は猿人、原人、旧人、新人の各進化段階に置かれており、人類の起源や系統が活発に論議されている。地球上の人類はすべて一つの種に入ることが確認されている。20世紀前半には人種概念から文化的なものを排除したうえで、人種分類が試みられたが、1950年以降は遺伝学および生態学的立場から人種形成が問題とされる一方、人種という用語のかわりに、多型とよぶ学者もいる。[香原志勢]

研究分野

現在の自然人類学は広い意味での人類進化を最大の課題としている。世界各地で地域開発が進み、交通通信機関の発達により旅行、情報交換が容易となり、発掘技術が改善され、関連諸科学が進歩したため、偶然出土する化石資料が増し、化石資料の計画的発掘の機会も多くなった。この結果、古人類学の発展には目覚ましいものがあるが、それは古霊長類学と結び付くことによって人類と類人猿の進化史上の関係が解明されつつある。これらの研究には古生物学、古気候学、地質学、年代測定学そして、とくに先史考古学の密接な協力・援助が必須(ひっす)となっている。一方、同一地域集団の時間的変遷の問題も注目されている。たとえば身長の増加、身体比率の変化、短頭化現象、そしゃく器の退縮などが時間の推移とともに観察されている。従来の自然人類学は人体計測および観察の手法を開発したため、人種研究のみならず、地域集団、職業集団などの身体比較や、性、成長、栄養の研究にもこれらが深く関係している。人種もしくは多型研究にあたり、体長、骨、筋肉および外形上の肉眼的な形態の変異ばかりでなく、メンデル遺伝をなす血液型やその他の生化学的形質、さらにDNA解析も重視されるようになった。これらの観点にたって、人類および人種系統、たとえば日本人の起源やモンゴロイドの成立といった問題に当面している。さらに人類適応論の面から、直立二足歩行、手指機能、道具使用、言語発声機構などの人類固有の諸特徴や、皮膚、循環器などの諸機能の集団間比較などの研究にあたって、人体運動学や生理学との協力が必要であり、独自の分野が開拓されている。現代科学同様、自然人類学も細分化を免れないが、一方では文化をもつ動物である人類を全体としてとらえるため、文化人類学や動物行動学その他との総合的な考察を求める声も高い。[香原志勢]
『木村賛著『ヒトはいかに進化したか』(1980・サイエンス社) ▽ドン・ブロスウェル他著、香原志勢監訳『人類と文明の誕生』(1980・文理)』

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世界大百科事典内の自然人類学の言及

【人類学】より

…化石人類の進化の大筋は19世紀末までに理解されるにいたったが,第三紀霊長類から猿人,原人,旧人,新人と続く進化の系列は1930年代以後に確認されたもので,今日でも彼らの生息年代や進化のプロセスについては議論が続いている。 人類学は人間の身性を研究する自然人類学と,諸民族の文化を対象とする文化人類学に大別される。ヨーロッパとくにドイツやオーストリアでは自然人類学をたんに人類学と呼び,未開社会や文化を研究する学問には民族学という名称が用いられてきた。…

【人間学】より

…ギリシア語のanthrōpos(人間)とlogos(言葉,理論,学)とに由来する16世紀のラテン語anthropologium,anthropologiaにさかのぼる用語で,〈人間の学〉を意味する。訳語の歴史は複雑で,1870年(明治3)西周(にしあまね)による〈人身学〉〈人学〉〈人道〉〈人性学〉の試みのあと,81年の《哲学字彙(じい)》は人と人類を訳し分け,anthropologyを〈人類学〉と訳し,84年の東京人類学会創立以来,明治・大正期には,もっぱら獣類・畜類と区別された人類の自然的特質の経験科学すなわち〈自然人類学〉の意味で使用され,人類の文化的特質に関する〈文化人類学〉としての使用は昭和期のことである。これに対し〈人間学〉は,1871‐73年西周によりコントのsociologieの訳に当てられたが(人間は人間(じんかん)として人の世,世間を指すから),これは一般化せず,92年には倫理学を人間学と呼びうるという主張が生じ,97年に〈人間知〉〈世間知〉の意味で初めて著書の題名となった。…

※「自然人類学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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