改訂新版 世界大百科事典 「プナン族」の意味・わかりやすい解説
プナン族 (プナンぞく)
Punan
Penan
東南アジア,ボルネオ島内陸の森林に居住する採集狩猟民の総称。20~75人程度の小集団でキャンプをつくり,猪,鹿,各種サル類を吹矢と槍によって捕獲するほか,果実,野生サゴヤシなどの植物性食物に依存して生活する。形質的にはボルネオの土着農耕民族(ダヤク族)と同質であり,フィリピンやマレー半島に住む採集狩猟民がネグリト的特徴を有するのと対照的である。言語,文化の面でもまた近隣農耕民,とくにクニャー族との類縁関係が顕著に認められる。これらはプナン族が農耕民と継続的に共生関係を保っていたことの結果である。カヤン族,クニャー族の首長層は,プナン族の採集した籐や籐製品(とくにマット)と鉄製品や綿布との交易を独占することによって,その権力を維持していた。サラワク中部に住むプナン・バ族は知られているかぎり狩猟民であったことはなく,カヤン・クニャー・カジャン群の一つをなす農耕民である。
執筆者:内堀 基光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報