ヘシュキオス(その他表記)Hēsychios

改訂新版 世界大百科事典 「ヘシュキオス」の意味・わかりやすい解説

ヘシュキオス
Hēsychios

ギリシアの文法学者。生没年不詳。5世紀あるいは6世紀に活躍したと推定されている。ディオゲニアノスの辞典に基づき,アリスタルコス,ヘリオドロスアピオンなどの小辞典の記事を加え,さらにヘロディアノスのアクセント研究の成果も踏まえて,アルファベット順による古代ギリシア語の大辞典を編纂した。現在ヘシュキオスの《辞典》として伝えられている著作は,この原著を大幅に縮約した摘要にすぎないが,それでも現存する古代ギリシアの辞典の中では最大規模のものであり,いまなお特に古代ギリシア詩の本文校訂に活用されるなど,言語学,文献学上の価値は絶大である。
執筆者: 現存の《辞典》は15世紀の保存の悪い写本が一つあるだけで,ヘシュキオスの原典に含まれていたはずの珍しい語の出典は,伝承の間に省略されてしまっている。にもかかわらず,この難語と方言形を集録した辞書は,近代にいたってギリシア語の方言研究と比較文法(〈比較言語学〉参照)の発達にともない,多くの有益な示唆をあたえている。たとえば,この辞書でéorはthugatēr〈娘〉,anepsios〈いとこ〉,その複数形éoresはprosēkontes,suggeneis〈親族〉の意としてあげられている。このéorという形はギリシアの文学作品には実例がない。しかしここに記された親族関係の意味と,予想される音変化から推して,これは英語,ドイツ語のsister,Schwester,ラテン語のsoror,サンスクリットのsvasar-などと同じ語源をもつ,印欧共通基語sesor-(は再構・措定形であることを示す)に基づく形と推定され,ギリシア語では失われたと思われたこの語彙痕跡が指摘されるにいたった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

関連語 喜代三 片山 風間

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘシュキオス」の意味・わかりやすい解説

ヘシュキオス
Hēsychios

ギリシアの歴史家,文学人名事典編纂者。6世紀にミレトスで活躍。『ローマ史』 Historia Romaike te kai pantodapeがあり,人名事典は散逸して『スイダス』によって伝えられるのみ。

ヘシュキオス
Hēsychios

ギリシアの辞典編纂者。5世紀頃アレクサンドリアで活躍。彼の辞典は方言と難解語を知るために重要。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

ローマ法王ともいう。ラテン語 Papaの称号はカトリック教会首長としてのローマ司教 (教皇) 以外の司教らにも適用されていたが,1073年以後教皇専用となった。使徒ペテロの後継者としてキリスト自身の定...

教皇の用語解説を読む