スペインの劇作家。マドリードで生まれる。法律の勉学を断念して文筆の道に入る。同市で死去するまでに172編の戯曲を書き、1922年にはノーベル文学賞を受賞した。
処女戯曲『他人の巣』(1894)に続く『名士達(たち)』(1896)、『野獣の餌(えさ)』(1898)、『土曜の夜』(1903)、『知事夫人』(1908)など一連の作品で、エチェガライに始まる大仰で技巧的なメロドラマ風潮のなかに停滞していた当時のスペイン演劇界を刷新活性化した。上品な風刺で、おもにマドリードの上・中流階級の退廃・偽善を批判しているが、『奥様』(1908)や『呪(のろ)われた恋』(1913)などは方言も使われている田舎(いなか)の悲劇。代表作は登場人物に近代精神がうかがえる『作りあげた利害』(1907)で、ほかに『書物で学んだ王子様』(1914)など児童劇もある。彼の社会風刺はサーカス興行主としてヨーロッパを巡った時期の体験を素材にしたといわれている。
[菅 愛子]
『永田寛定訳『作りあげた利害』(岩波文庫)』
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