知識集約的で創造的な中小企業をいう。venture businessは和製英語であり,1970年に中村秀一郎と清成忠男が独自の概念構成を行った。すなわち,高い専門能力を有する企業家的人材が自分の能力を発揮するために大企業から飛び出し,リスクを引き受けて創造的に展開する事業である。アメリカでは,こうした企業をhigh potential venture,new growth ventureなどと呼んでいる。ベンチャー・ビジネスは,重化学工業化が成熟段階に達し,創造的な事業活動が重要性を増すに及んで数多く登場するようになる。アメリカでは1950年代の末から60年代に第1次のブームをむかえ,コンピューター産業や半導体産業を中心にベンチャー・ビジネスが族生した。ディジタル・エクイップメント,ワング・ラボラトリー,インテル,データ・ゼネラルなど,大企業にまで成長したものも少なくない。70年代には石油危機の影響もあってベンチャー・ビジネスは低調であったが,70年代末から再びブームをむかえている。マイクロ・エレクトロニクスやバイオテクノロジーなど技術革新の波に乗って登場しているのであり,アップル・コンピューター,ジェネンテックなど急成長企業も少なくない。
アメリカではこうした企業に投資するベンチャー・キャピタルventure capitalが数多く存在している。ベンチャー・キャピタルは〈企業を開発する企業〉であり,投資先企業を成長させ,株式を店頭市場で公開させる。そのうえで持株を市場で売却してキャピタル・ゲインを得る。日本でも,昭和40年代にベンチャー・ビジネスが少なからず登場したが,株式の店頭市場が整備されておらず,ベンチャー・キャピタルの活動が成り立たないため,急成長するものが少なかった。最近では研究開発が重視されるにともないベンチャー・ビジネスの重要性が痛感され,ようやく店頭市場の充実がはかられつつある。83年11月には登録ディーラー(店頭市場に株式を公開している銘柄について,売り買いの気配を公表し,それに基づいて売買に応ずる証券会社,略してTD)制度がスタートした。また大阪証券取引所は84年1月上場基準の大幅緩和とともに,第二部市場の中に特別指定銘柄制度(新二部)の新設を行った。本格的なベンチャー・キャピタルも登場するにいたった。
執筆者:清成 忠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
大企業や大学などの研究機関からスピン・アウト(飛び出し)した人たちが中核となって、高度の専門能力、創造的才能、企業家精神を生かして、大企業では着手しにくい特殊な新規需要部門に挑戦している研究開発型新規企業のこと。VBと表記されることもある。当初、電子、化学、機械などの産業を中心にモノ(ハードウェア)の領域に簇生(そうせい)したが、流通、サービス、社会開発、情報処理などの産業にも広がりをみせている。このため、最近のベンチャー型企業の特徴は、モノ、情報(ソフトウェア)、サービスの三者の結び付きに注目し、その連結の仕事(新しいシステムづくり)に創意工夫を凝らし、新機軸を生み出し、豊かな事業機会を開発していくところにあるといわれる。ベンチャー・ビジネスの活躍の場が、大企業の参入には魅力に乏しい市場規模で、比較的手間がかかるものを小回りよくこなすところにあるため、大企業も内部にベンチャー・ビジネスに準じた組織(社内ベンチャー)を設け、有能な社員のスピン・アウトを防止したり、別組織の子会社に人材を集め(社外ベンチャー)、親企業が一部出資してこれを育成し、成功したら統合するという方式もみられる。ベンチャー企業は成長速度が速い反面、倒産のリスクも大きい。資金需要の面では、研究開発段階から事業化段階に進む際に、多額の資金が必要となり、それを調達できないと「死の谷(デスバレーすなわち収益がなく、開発費等支出が先行して赤字が続き、資金不足におちいる期間)」に落ちる。また、組織の急拡大に伴い、ビジョンやルールの共有化が困難になり、社員による不正行為が発生することもある。ベンチャー・ビジネスが成功するためには、革新的なアイデアや技術だけではなく、マーケティングや組織管理、財務などの経営面の知識やノウハウが不可欠である。技術者だけでなく、これらの知識をもった専門経営者が経営にあたることが重要である。
[殿村晋一・鹿住倫世]
出典 マイナビ2012 -学生向け就職情報サイト-就活用語集(就活大百科 キーワード1000)について 情報
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(竹内文則 富士常葉大学教授 / 森岡英樹 金融ジャーナリスト パラゲイト・コンサルタンツシニア・リサーチ・アソシエイツ / 2007年)
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…このような代表例としては,テレダイン社Teledyne,Inc.やLTV社があげられる。テレダイン社は,1960年代に創設され,ベンチャー・キャピタル(ベンチャー・ビジネス)であるアーサー・ロック社から投資を受けるとともに生命保険会社を乗っ取り,ついで当該生命保険会社の資金を活用してつぎつぎに大企業の経営権を取得した。その結果,数年にして《フォーチュン》誌の全米上位500社にランクされる企業にまで拡大した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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