有限責任事業組合(読み)ユウゲンセキニンジギョウクミアイ

デジタル大辞泉 「有限責任事業組合」の意味・読み・例文・類語

ゆうげんせきにんじぎょう‐くみあい〔イウゲンセキニンジゲフくみあひ〕【有限責任事業組合】

海外LLPモデルに導入された、事業組織の形態の一つ。個人または法人共同出資し事業を営むために設立する。出資者は出資額の範囲責任を負い、組合員として事業上の意思決定および業務執行への参加が義務付けられている。法人格がないため法人税課税されず、出資者への配当に直接課税される。日本版LLP。→合同会社

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有限責任事業組合」の意味・わかりやすい解説

有限責任事業組合
ゆうげんせきにんじぎょうくみあい

経済産業省所管の「有限責任事業組合契約に関する法律」(平成17年法律40号)により、民法上の組合の特例として導入された事業組織体制度。同法は、2005年(平成17)4月27日に成立し、同年8月1日施行された(以下、LLP法と略称)。諸外国では、出資者の有限責任制、組織の内部自治、構成員課税といったメリットを享受できる新しい事業体制度が整備されているが、日本では、従来、それらのメリットを兼ね備えた事業形態が存在しなかった。そこで、ベンチャー企業振興、中小企業の連携、研究開発の促進等を目的として、LLP(Limited Liability Partnership)と称される有限責任事業組合という事業組織体の制度が導入された。日本では、この制度により、組合員の有限責任、内部自治、構成員課税(パススルー)などの各種メリットの享受が可能となる。

 有限責任事業組合の制度の概要は次のとおりである。有限責任事業組合の成立は、要式の組合契約により、組合員全員の署名記名押印が必要となる。出資にかかる払込みまたは給付の全部の履行が、契約の効力発生要件であり、登記が第三者対抗要件である(LLP法3~8条)。労務出資はできない。有限責任事業組合では、共同事業性が求められ、重要な意思決定は原則として総組合員の同意によって決定し(同法12条1項)、また、各組合員が業務執行を分担しなければならない(同法13条1項)。内部組織として、監視機関の設置は自由である。利益分配は、原則として出資比率に応じるが、特別の定めにより、労務知的財産、ノウハウの提供などの各出資者の貢献度に応じて出資比率とは異なる分配もできる(同法33条)。組合員の加入には組合契約の変更を要し、払込み等の完了時に組合員になる。組合員はやむをえない場合を除いて組合を脱退できないが、組合契約に別段の定めができる(同法24条)。有限責任事業組合自体は法人格がなく納税主体にならず、課税は構成員個人に対してなされる。

[福原紀彦]

『山田亨・唐津真美・山口亨著『有限責任事業組合LLPの法律と登記』(2005・日本法令)』『石綿学・須田徹編著『日本版LLP(有限責任事業組合)の法務と税務・会計』(2006・清文社)』『日下部聡・石井芳明著『よくわかるLLP(有限責任事業組合)活用法』(2006・東洋経済新報社)』

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百科事典マイペディア 「有限責任事業組合」の意味・わかりやすい解説

有限責任事業組合【ゆうげんせきにんじぎょうくみあい】

民法上の組合の特例として2005年〈有限責任事業組合契約に関する法律〉により導入された新たな事業組織の形態。LLP(Limited Liability Partnership)と略称。出資者の責任は有限責任制で,出資者自らが経営し内部の取決めを自由に定めることができる内部自治原則により(株主総会,取締役会などを開催する必要がない),またLLP自体は課税されず出資者それぞれに課税される構成員課税制度が適用される。米国の有限責任会社(LLC)などがモデルだが,会社法により新設された合同会社とは異なり,法人課税がないのが特徴。ベンチャー・ビジネスの起業などに適する形態といえる。

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知恵蔵 「有限責任事業組合」の解説

有限責任事業組合

創業を促進し、共同研究開発などのジョイント・ベンチャーなどの受け皿として新会社法で新設されたのが日本型LLC(合同会社)だが、パススルー課税が認められていないなど大きな制約があった。これに対して、経済産業省が検討し、民法組合の特例として2005年8月に有限責任事業組合法(LLP法)が制定され、有限責任事業組合が登場した。これは、(1)有限責任性、(2)内部自治原則、(3)構成員課税、という3つの特徴を持ち、ベンチャー、共同研究開発、産学連携、専門技能を有する人材による共同事業の振興、新産業の創造が期待されている。ちなみに、英国では00年に創設以来、会計事務所、デザイン事務所、ソフト開発会社などを中心に1万社を超えるLLPが誕生している。日本のLLPでは、組合事業から生じた損失を節税に利用する租税回避を抑止することを目的として、LLPにではなく出資者に直接課税する構成員課税を適用している。

(高橋宏幸 中央大学教授 / 2008年)

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株式公開用語辞典 「有限責任事業組合」の解説

有限責任事業組合

出資者が出資額までしか責任を負わず、事業で獲得した利益の配分や権限が出資金額の比率に拘束されない事業体のこと。別名 LLP[えるえるぴー]。

出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報

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