合同会社は、2005年(平成17)に成立した会社法により新たな事業体として創設された会社で、定款所定の出資額を限度とする間接有限責任を負うにすぎない社員だけで構成される一元的組織の会社である(会社法576条4項、580条2項)。創業の活発化、情報・金融・高度サービス産業の振興、共同研究開発・産学連携の促進等を図るため、出資者の有限責任が確保されつつ、会社の内部関係については組合的規律が適用されるという特徴を有する。アメリカの各州では、LLC(Limited Liability Company)とよばれる事業組織体の制度があり、そこでは、LLCの出資者の責任が出資金を限度とする有限責任でありながら、LLCの利益に対する直接の課税がなく、出資者に対する配分のみに課税されるパススルー課税の仕組みがとられ、ベンチャー企業などで大いに利用されている。この企業形態を日本の会社制度において実現する意図があったころから、合同会社は、日本版LLCとよばれることがある。しかし、日本では、会社はすべて法人とされ、法人税の納税主体であることから、パススルー課税の仕組みは、合同会社では実現しておらず、別途、有限責任事業組合の制度において実現している。
合同会社の特徴は次のとおりである。合同会社は、有限責任社員のみからなる人的会社であり、内部規律としては合名会社・合資会社と同一規定が適用される。合同会社の設立は、社員全員の合意による定款の作成、出資全額の払込みおよび設立登記による(会社法575~579条)。合同会社の構成員たる社員は1人でもよく、法人でよい。ただし、出資の目的は金銭その他の財産のみである(同法576条1項)。合同会社の業務執行においては、原則として所有と経営が一致する。ただし、定款で業務執行社員を定めることができる(同法590条1項)。業務執行社員に関して、旧物的会社の規律(責任・代表訴訟等)が導入されている(同法597条ほか)。合同会社の内部組織に関して、社員間および社員と会社間の事項の設定は定款により自由である(同法585条ほか)。各社員の議決権は出資比率と無関係に定めることができる(同法577条)。監査機関の設置も自由である。利益分配は、所定の財源規制を遵守すれば、定款で自由に決定でき、出資比率と無関係に個々の社員の業績への貢献度等に応じて分配することもできる(同法622条)。合同会社の加入・持分(もちぶん)譲渡につき、成立後は原則として社員全員の承認が必要とされる(同法604条ほか)。退社の自由がある(同法606条)。組織変更・資金調達その他に関して、社員全員の同意による株式会社への「組織変更」ができ(同法744条ほか)、社債発行可など資金調達の多様性が確保されている(同法676条以下)。また、合同会社では会社間で合併等の組織再編行為が可能である。なお、合同会社においては、現行の法人税法上、法人税の納税主体である。
[福原紀彦]
『根田正樹・矢内一好編『合同会社・LLPの法務と税務』(2005・学陽書房)』▽『山崎茂雄編著『LLCとは何か――新会社法と合同会社』(2006・税務経理協会)』
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(高橋宏幸 中央大学教授 / 2008年)
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