大学発ベンチャー(読み)だいがくはつべんちゃー

共同通信ニュース用語解説 「大学発ベンチャー」の解説

大学発ベンチャー

大学の研究成果に基づいた技術を事業化したり、在籍する研究者や学生創業したりするベンチャー企業。大学が資金や事業展開の支援をすることもある。経済産業省がまとめた2021年10月末時点の調査によると、企業数は3306社。大学別では東京大の329社が最多で、京都大(242社)、大阪大(180社)、筑波大(178社)と続く。事業分野は「バイオ・ヘルスケア・医療機器」や「ソフトウエアやアプリ開発のIT」が目立つ。上場64社の時価総額は計1兆7千億円。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大学発ベンチャー」の意味・わかりやすい解説

大学発ベンチャー
だいがくはつべんちゃー

大学の教員、研究者、学生が、開発した技術を用いて事業化する企業のこと。教員等が自ら会社設立して役員となり事業化するもの、技術を特許化して大学やTLO(技術移転機関:Technology Licensing Organizationの略称)に登録し、学外の企業に実施許諾(ライセンシング)して技術移転し事業化するもの、企業との共同研究の成果を企業が事業化するもの、教員等が企業に対して技術指導を行い、事業化するものなどが含まれる。

 大学発の技術を応用して事業化した例は、第二次世界大戦前からみられる。山形大学発企業である帝人(ていじん)や、理化学研究所発企業などがその例である。しかし「大学発ベンチャー」として最先端技術の事業化が広く期待されるようになったのは、2001年(平成13)に発表された政策案「平沼プラン」以降である。当時の小泉政権が掲げた「骨太の方針」に呼応して、経済産業大臣であった平沼赳夫(たけお)が、プランの一つとして、大学発ベンチャーを2002年度から5年間で1000社にする「大学発ベンチャー1000社構想」を盛り込んだ。バブル経済の崩壊後、長期にわたる景気低迷を脱し、次世代を担う新産業を創出するため、大学発ベンチャーの創出が希求されたのである。

 大学発ベンチャーが期待された背景として、大企業による研究開発費の削減により、リスクの高い先端的研究が大学に期待されていたこと、国立大学法人化により国立大学に社会貢献や地域貢献が求められるようになったこと、また自前の収益の確保を余儀なくされたことなどがある。1998年の「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(通称「大学等技術移転促進法」平成10年法律第52号)」、および1999年の「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(通称「産業活力再生特別措置法」平成11年法律第131号)」(いわゆる「日本版バイ・ドール法」)による教員等が開発した技術の大学帰属や技術移転の制度整備、2000年の「産業技術力強化法(平成12年法律第44号)」による国立大学教官の兼業禁止規定の緩和などの環境整備が進んだことも挙げられる。

 経済産業省が作成した「平成20年大学発ベンチャー基礎調査」によれば、大学発ベンチャーは、2006年度末までに1627社、2008年度末までに1809社設立され、政策目標は達成された。大学発ベンチャーによって創出された市場の規模は約2700億円、雇用創出は約17万人と評価されている。しかし、大学発ベンチャーのうち43.2%(2年分のデータが入手できた273社の分析)はいまだ研究開発段階にとどまっており、製品化、事業化には至っていない。その原因としては、技術に精通した経営人材の不足が大きい。これまで、事業化に成功し、株式を上場・公開した大学発ベンチャーは、大阪大学発のアンジェスMG株式会社(遺伝子治療に用いる医薬開発と実用化を行うバイオ製薬企業)、東京女子医科大学・早稲田大学発の株式会社セルシード(細胞シート工学の研究開発などの再生医療)など、24社にとどまっている。専門の経営人材とのマッチングにより、大学発ベンチャーの事業化を促進することが必要である。

[鹿住倫世]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

産学連携キーワード辞典 「大学発ベンチャー」の解説

大学発ベンチャー

「大学発ベンチャー」とは、大学の教官、学生、または公的試験研究所の研究成果を技術シーズとして事業化・創業を行う事業主体のこと。大学、公的試験研究機関等の研究者、学生等が兼業等により事業活動を行い創業する、または、大学等の研究成果を技術移転して創業する場合などがある。

出典 (株)アヴィス産学連携キーワード辞典について 情報

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