日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウライエソ」の意味・わかりやすい解説
ホウライエソ
ほうらいえそ / 鳳来狗母魚
鳳来鮧
鳳来鱛
蓬莱狗母魚
蓬莱鮧
蓬莱鱛
寳來狗母魚
寳來鮧
寳來鱛
viperfishes
硬骨魚綱ワニトカゲギス目ホウライエソ科Chauliodontidaeの総称、またはそのなかの1種。ホウライエソ科の魚類は世界に広く分布する深海魚で、中層から深層を遊泳する。体が細長く、体高は頭の背部でもっとも高くて、頭高は頭長におよそ等しい。上下両顎(りょうがく)に多数の大きくて鋭い歯があり、伸長した歯は牙(きば)状で、下顎の前歯は口を閉じても口内に収まらず、吻端(ふんたん)を通り越して、目の上方に達する。明瞭(めいりょう)な鰓耙(さいは)はなく、棘(きょく)状歯がある。下顎前端のひげは短く単一か、またはない。頭部と胴部の腹側面に2列、尾部に1列の発光器列が並ぶ。目の前下方に眼下発光器、目の後縁下方近くに大きい眼後発光器がある。体側は5列に並ぶ六角形の鱗(りん)状紋に覆われる。背びれは体の前方にあり、腹びれより前の、頭部の近くに位置する。背びれ第1軟条は糸状に伸長する。臀(しり)びれは尾びれの近くに位置する。脂(あぶら)びれ(肉質の小さいひれ)は2個あり、臀びれの上方に大きい背側脂びれ、臀びれの前に小さい腹側脂びれがある。尾びれは二叉(にさ)する。前部の脊椎骨(せきついこつ)は退化していて、骨化はしていない。本科は世界の海域から1属8種が、日本近海からはホウライエソChauliodus sloaniとヒガシホウライエソC. macouniの2種類が知られている。英名のviperfish(毒蛇魚)は六角形の鱗(うろこ)状紋と牙状歯が毒蛇に似ていることに由来する。
[上野輝彌・尼岡邦夫 2025年10月21日]
代表種
ホウライエソ(英名Sloane's viperfish)は、北海道のオホーツク海から南西諸島の太平洋沖、小笠原(おがさわら)諸島、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、九州・パラオ海嶺(かいれい)、南シナ海など太平洋、インド洋、大西洋の温帯から亜熱帯海域に広く分布する。背びれが5~7軟条、臀びれが10~13軟条からなる。前上顎骨の牙状歯の第4歯は第3歯より長い。眼後発光器は丸く、眼窩(がんか)の後縁下方かそれよりすこし前方にある。おもな体の発光器は、胸びれ基底(付け根の部分)より前方の腹面にある胸びれ前発光器が8~12個、胸びれ基底から腹びれ基底の腹面にある腹びれ前腹部発光器が17~23個、腹びれ基底から臀びれ起部にある腹部腹側発光器が22~28個、臀びれ起部から尾びれ基底にある尾部発光器が9~13個、体の腹側面にある体側発光器が41~48個。体は黒褐色で、各ひれは淡色。水深200~4700メートルの中層域にすみ、中層トロールや深層トロールでとれる。夜間に表層近くまで浮かぶ日周鉛直移動をする。おもにハダカイワシ類などの小形魚類、甲殻類などを食べる。獲物をとらえるときは頭を大きく持ち上げ、頭の下部に大きい空間をつくることで、容易に口の中に取り込むことができる。頭を元の位置に戻すと獲物が胃に送り込まれる。最大体長は約35センチメートルに達する。
本種はヒガシホウライエソによく似るが、ヒガシホウライエソは眼後発光器が三角形で、前上顎骨の牙状歯の第3歯が第4歯より長いことなどで本種と異なる。なお、本種によく似た化石が、アメリカのカリフォルニア州の中新世の地層から発見されている。
[上野輝彌・尼岡邦夫 2025年10月21日]



