改訂新版 世界大百科事典 「ホウ酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説
ホウ(硼)酸ナトリウム (ほうさんナトリウム)
sodium borate
化学式xNa2O・yB2O3に対応する種々の組成の塩(表)が知られているが,最もよく知られているのは,四ホウ酸塩Na2B4O7とメタホウ酸塩NaBO2である。オルトホウ酸塩Na3BO3(x:y=3:1)は知られていない。
四ホウ酸ナトリウムsodium tetraborate
化学式Na2B4O7。10水和物Na2B4O7・10H2Oがホウ砂boraxの名称でよく知られ,白色半透明の鉱物として,北アメリカ西部の砂漠地帯,中部アジアの砂漠中のかん(鹹)湖の沈殿物中に存在する。通常は天然産のものを水で抽出し,濃縮析出させたのち,再結晶により精製する。60℃以下で10水和物,60℃以上で5水和物として存在する。加熱により水を失い320℃で無水和物となる。無水和物は融点741℃。10水和物は無色,単斜晶系の結晶。比重1.69。モース硬度2。水100gへの溶解度4.7g(20℃)。水溶液はアルカリ性を示す。10,5水和物のほかに,1,2,4水和物がある。4水和物は天然にカーン石kerniteとして北アメリカに産出する。無水和物はエチルアルコールに不溶。加熱融解した無水和物は重金属塩を溶かし,独特の色を与える。化学実験用として,ホウ砂球反応(溶球試験),酸標定用のアルカリ標準物質,緩衝液およびpH標準液調製に用いられる。工業用としては金属鑞付(ろうづけ)用フラックス,エナメル,ホウケイ酸ガラスなどの原料,洗濯用,医薬,防腐剤などの用途がある。
メタホウ酸ナトリウムsodium metaborate
化学式NaBO2。無色六方晶系のプリズム状結晶。水100gへの溶解度26g(20℃),36g(35℃)。熱水溶液から三斜晶系の4水和物を析出する。4水和物は融点57℃。120℃で無水和物となる。無水和物は融点966℃,沸点1430℃。炭酸ナトリウムと当量の四ホウ酸ナトリウムとの混合物を強熱して得られる。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報