溶球試験(読み)ようきゅうしけん(その他表記)bead reaction

日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶球試験」の意味・わかりやすい解説

溶球試験
ようきゅうしけん
bead reaction

金属塩類の定性分析を行う際の予備試験の一つ。溶球として普通はホウ砂(しゃ)球とリン塩球が使われるので、ホウ砂球試験およびリン塩球試験総称として使われる。

 前者はホウ砂Na2B4O7・10H2Oを加熱脱水したあと強熱し、融解して生じるホウ砂球を用い、各金属塩類の呈色反応利用するものであり、後者リン酸水素アンモニウムナトリウムNaNH4HPO4・4H2Oを脱水強熱して生じるリン塩球を用いて各金属塩類の呈色反応を利用するものである。

 ホウ砂球はメタホウ酸ナトリウムNaBO2と無水ホウ酸B2O3主体であり、
  Na2B4O7・10H2O
   →Na2B4O7+10H2O
  Na2B4O7→2NaBO2+B2O3
リン塩球はメタリン酸ナトリウムNaPO3が主体である。

  NaNH4HPO4・4H2O
   →NaPO3+NH3+5H2O
 これらの溶球に金属塩類を含む試料をつけて酸化炎で加熱融解すると金属酸化物MO(たとえば二価金属として)となり、メタホウ酸ナトリウムや無水ホウ酸あるいはメタリン酸ナトリウムと反応する。

  MO+2NaBO2→M(BO2)2+Na2O
  MO+B2O3→M(BO2)2
  MO+2NaPO3→M(PO3)2+Na2O
 このようにして生じる金属のメタホウ酸塩メタリン酸塩金属元素によって特有の色を呈するので定性分析を行うことができる。一方、還元性雰囲気(還元炎)で強熱すれば、金属は低酸化状態もしくは単体まで還元され、金属特有の色を呈する。溶球試験は一般に酸化炎と還元炎とで異なる色を呈することが多く、同時にまた熱時と冷時とで色調が異なることがある。

[成澤芳男]

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改訂新版 世界大百科事典 「溶球試験」の意味・わかりやすい解説

溶球試験 (ようきゅうしけん)
bead test

定性分析に利用される乾式法予備試験の一つ。溶球反応bead reactionともいう。ホウ砂Na2B4O7・10H2Oまたはリン塩(リン酸水素アンモニウムナトリウム)NaNH4HPO4・4H2Oを強熱してできるガラス状の溶球に金属酸化物または塩類が溶けて着色することを利用するもので,溶球にホウ砂を用いるものをホウ砂球試験borax bead test,リン塩を用いるものをリン塩球試験phosphate bead testという。まず,先端を直径3mm程度の環状に巻いた白金線をバーナーで強熱し,これにホウ砂またはリン塩の粉末を付着させて再び熱する。この際に,ホウ砂は結晶水を失いメタホウ酸ナトリウムNa2B4O7と酸化ホウ素B2O3に分解して無色のガラス状の小球(ホウ砂球)となる。リン塩はアンモニアと結晶水を失って同じくガラス状のメタリン酸ナトリウムNaPO3の小球(リン塩球)となる。これらの溶球に,熱いうちに手早く少量の試料を付着させて強熱すると,試料中の金属が種々の形で溶球に溶け込み複雑なホウ酸塩またはリン酸塩を生じ,それぞれの金属に特有の呈色が見られる(表参照)。この呈色は,酸化炎を用いるか還元炎を用いるかにより,また,熱いうちと冷えてからとでは異なることが多い。2種類以上の金属成分が共存する場合には判定がむずかしく,また,あまり多量の試料を付着させた場合にも色が濃くなりすぎてやはり判定が困難になる。なお,溶球は吸湿性であるため,長く放置すると空気中の湿気により潮解して白濁化する。
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百科事典マイペディア 「溶球試験」の意味・わかりやすい解説

溶球試験【ようきゅうしけん】

定性分析に利用される乾式法予備試験の一つ。ホウ砂またはリン塩を強熱してできるガラス状の溶球に金属酸化物が溶けて特殊な着色反応を示すことを利用。→ホウ砂球試験リン塩球試験
→関連項目定性分析

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