イギリスの経済学者。イングランドのダービーで自由主義的な新聞経営者の家に生まれ,1880年から87年までオックスフォード大学で主として古典学を学び,卒業後著述活動の傍ら経済学の研究に励んだ。著書は大小50種以上にのぼるが,20世紀の初頭,折しもイギリスで植民地領有熱がさかんであったころに著した《帝国主義論Imperialism:A Study》(1902,4版1948)は,世界に広く知られている。本書は彼が《マンチェスター・ガーディアン》の特派員として99年南アフリカにおもむき,南ア戦争を目撃するなどした体験に刺激されて書かれた。ホブソンの経済学説で注目されるのは過少消費説と過剰貯蓄説で,《帝国主義論》もこの学説に依拠している。すなわち彼は帝国主義の原因として,所得分配の不平等に起因する過度の貯蓄,そこから生じる過剰投資・過剰生産,あるいは余剰資本の存在を挙げ,金融業者その他投資に関連ある勢力が帝国主義を助長する経済的諸勢力の中枢をなすと説いた。彼の帝国主義批判の立場は一口でいえばフェビアン社会主義であり,その過少消費説を中心とする学説は,正統派経済学に対して批判的,異端的であったため,当時のイギリス経済学界にいれられず,みずからも〈異端の経済学者〉として,生涯を著述家として過ごした。しかし死後,その《帝国主義論》はレーニンの《帝国主義論》に批判的に摂取され,また過少消費説はケインズに高く評価された。
執筆者:川田 侃
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イギリスの社会経済学者。イングランドのダービー市に生まれる。1876年から80年までオックスフォード大学で古典学を学び、卒業後経済学の研究を始めた。処女作は実業家マムマリーとの共著『産業の生理学』The Physiology of Industry(1889)である。その後の著作活動は活発で、経済学のほか、政治学、社会学、倫理学などに及び、著書は50点を超えている。彼は19世紀後半のビクトリア中期から20世紀の第二次世界大戦までのイギリスの繁栄と不況のなかで、失業、貧困、所得格差、自由主義と帝国主義、戦争、社会統制といった激動の時代にしたたかに挑戦したユニークな「社会改革」者であった。彼の学説の基本は、資本主義の下での富の分配の不平等によって消費が円滑にいかず、過度の貯蓄、過度の投資をもたらし、その結果、生産過剰になるというのである。主著は『帝国主義論』Imperialism : A Study(1902)であり、ここでも、過剰貯蓄と過少消費という富の不公平な分配を批判し、金融資本家を核とする資本家的利益集団が帝国主義の重要な経済的要素をなすものであると説いた。
[清水嘉治]
『矢内原忠雄訳『帝国主義論』上下(岩波文庫)』▽『高橋哲雄訳『異端の経済学者の告白―ホブスン自伝』(1983・新評論)』▽『清水嘉治著『改革の経済思想―J・A・ホブスン研究序説』(1998・白桃書房)』
イギリスの宣教医。ウェルフォード生まれ。ロンドンのユニバーシティ・カレッジで医学を学び、のちロンドン伝道会に入会。1839年同会の宣教医として中国のマカオに派遣され、同地の病院に勤務。その後、香港(ホンコン)、広東(カントン)、上海(シャンハイ)などの各地を巡り、病院を開設し活発な医療活動を行った。1858年帰国。帰国前の1851年、解剖学・生理学に関する要点を中国人助手の協力を得て漢文で『全体新論』として著した。この書は中国でも読まれたが、1857年(安政4)には日本でも翻刻出版された。ホブソンはその後も医書、キリスト教関係書十数点を公表した。
[大鳥蘭三郎]
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1858~1940
イギリスの経済学者。過少消費説を唱え,フェビアン協会に属した。南アフリカ戦争中『帝国主義論』(1902年)を著し,帝国主義に最初の理論的な批判を行った。
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…この政治的環境から二つの帝国主義批判が生まれた。その第1は母国イギリスの政治経済に焦点をあてたもので,J.A.ホブソンによるものである。彼は雑誌の特派員として南アフリカを訪問し,その戦争の背後には経済的動機,とりわけ大金融業者の暗躍があるとの印象を受けた。…
…しかし02年イギリス側が勝ち,フェレーニヒング和平条約によって,トランスバールとオレンジ自由国はイギリス直轄植民地となった。なお,この戦争に特派員として派遣されたJ.A.ホブソンはその見聞に基づいて《帝国主義論》(1902)を著した。【林 晃史】。…
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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