日本の自動車技術240選 の解説
ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ
製作(製造)年1981
製作者(社)本田技研工業株式会社
資料の種類量産品
現状非公開
型式名ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ
通称名ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ
技術用途車載ナビゲーション装置
適用車種1981 ACCORD SALOON、1981 VIGOR SALOON
製作開始年1981
実用化年1981
設計者(株)本田技術研究所
協力者アルプス電気株式会社、アルパイン株式会社、スタンレー電気株式会社、株式会社昭文社、三菱鉛筆株式会社
装置構成表示部、航法コンピュータ、方向センサ、走行距離センサ、専用地図、マーキングペン
表示部6インチ モノクロ(グリーン)CRT
性能機能6インチモノクロ(グリーン)CRT上に走行軌跡、その先端に自車位置マーク(大きな丸印)と車両の方位マーク(十字印)を表示する。表示は縮尺、位置、回転角度、輝度、コントラストを変更することができる。地図シートは表示部と操作部の間にある地図挿入口に差し込み、軌跡表示に合わせて回転、移動した後に地図固定レバーを押し下げることによって地図シートを固定する。地図シートにはイレーサブルな専用ペンで目的地や予定コースを記入することができる。主要諸元表示 P31蛍光体6インチCRT 有効表示画面サイズ:80 mm × 100 mm 走行軌跡表示長: 80 mm MAX 有効縮尺可変範囲 1/7,000 ~ 1/400,000コンピュータ 16 bit マイクロプロセッサ(外部バス 8 bit) ROM 10 KB, SRAM 1 KB, DRAM 16 KB走行距離センサ 8極マグネット回転、ホールICピックアップ方向センサ ガスレートジャイロセンサ(ヘリウムガス) 検出範囲 -70 deg/sec ~ +70 deg/sec 出力感度 5 V/(100 deg/sec)地図 0.1tルミラーフィルム透過性多刷オフセット印刷シート シートサイズ A5判 基本縮尺 1/250,000電源 DC 12 V 自動車用バッテリ 消費電流 平均 3.5 A(予熱時 12 A MAX)重量 約 9 kg使用温度範囲 表示部 -30℃ ~ +80℃ コンピュータ -30℃ ~ +60℃ 走行距離センサ -30℃ ~ +120℃ 方向センサ -30℃ ~ +60℃
効果 本装置を利用しての実走評価テスト、ユーザーモニタテストを、混雑した都心の道路、幹線から外れた地方道、高速道路および山岳路など種々の条件下で実施した結果、地図シートの取り扱い性などに若干の難は残るが総合的な評価として次のような効果が大きかった。・気苦労の多い初めての道での安心感が大きい。・予期せぬ渋滞や工事に出会っても、地元のドライバと同様スムーズに迂回できる。・遠距離走行時に最短コース、最適コースを途中で気軽に選べるのでドライブの疲れ低減や、時間やガソリンの節約も図れる。・うっかり道を間違えても、間違えたことがすぐわかり、すぐに修正もできる。・暗い夜の不案内で標識や目印も見かけにくいようなところで、不安を解消し、良き道案内の役目を果たす。
エピソード・話題性 それまでの目的地方向と残りの直線距離のみを表示するナビゲーションシステムに対し、地図上で直接自車位置を知ることができる世界初の地図型ナビゲーションシステムとしてアコード/ビガーに搭載された。地磁気センサではなくジャイロを採用し、外乱に影響されずに方位角を検知可能とした。地図型、ジャイロ利用はその後のナビゲーションシステムの主流となった。
特徴 自車の過去の走行経路と現在位置が地図シート上で正確に確認できるので、これから進むべき道路と方向が明快に示される。また、位置誤差が生じても走行軌跡と道路形状を人間が照合することによって地図上の自車位置を容易に判断、修正可能である。
参考文献本田技研工業株式会社 HONDA NEWS、世界で初めて自動車用ジャイロを実用化した運転補助装置「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を開発、1981年8月24日本田技研工業株式会社 広報資料、ホンダ エレクトロ・ジャイロケータ、1981年8月24日田上ほか、自動車用慣性航法装置\"エレクトロ・ジャイロケータ\"、自動車技術、Vol.36, No.5, 1982田上ほか、自動車用慣性航法装置の開発、計測と制御、Vol.21, No.7, 1982k. Tagami et al., \"Electro Gyro-Cator\" New Inertial Navigation System for Use in Automobiles, SAE Technical Paper 830659, 1983
出典 社団法人自動車技術会日本の自動車技術240選について 情報