鳥の眼に写る景色さながらに,高みから見おろしたように描いた図。記号と図式によって地形・地物を描く近代地図の出現前に,絵画的手法で特定地域の状況,たとえば地形や耕地・集落,道路・水路,境界などを示したのがはじまりで,ヨーロッパでとくに発達した都市鳥瞰図のような大縮尺図から,日本の荘園図あるいは国絵図のようなかなりの広域を扱ったものまで,中世以降各種各様の鳥瞰図が作成された。わかりやすいため,今日でも主として旅行者や観光客相手の案内図として作られており,絵画またはデザインとしての鑑賞価値の高いものもある。また鳥瞰図ではしばしば,1枚の図の中に異なった視角・視点からの眺めが合成されていたり,地形・地物の位置関係をわざとゆがめて,写真では写しえないものまでも描き出す,といったくふうがみられる。一方19世紀末以来,地図学者や地形学者の手で,立体図式と総称される新しい鳥瞰図が案出された。その一つ,ブロックダイヤグラムは,正確な地形図を基図として地形・地物を俯瞰的に立体化した一種の透視図で,原則として高さの誇張以外の歪曲は与えず,またしばしば図の側面あるいは内部に設けた切断面に,地質構造を示す。地形の成因や発達過程を示すのが目的なので,仮想的に作画される場合もある。またランドフォームマップは,いくつかに分類された地形のタイプを絵画的に記号化し,それらを地図上に並べることによって,地形分類と地形区区分の結果を図示したものである。さらに最近ではコンピューター・グラフィックスの手法を使い,地形図から直接任意の視点からの鳥瞰図が作られている。各種のデータを数値化して入力するもので,コンピューター・マップとも呼ばれる。作図作業が自動化・省力化され精度の向上などの利点がある。また,視点の変化や対象の移動・回転などにより実際にはありえない角度からの図も得られ(例えば地下に視点を置くなど)いろいろな研究や表現に利用されている。
執筆者:佐藤 久
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