改訂新版 世界大百科事典 「ボタンウキクサ」の意味・わかりやすい解説
ボタンウキクサ
Pistia stratiotes L.
サトイモ科の浮遊性水草で,熱帯に広く分布する多年草。ウォーター・レタスwater lettuceとも呼ばれ,アクアリウム用として広く知られている。葉は先端鈍形の円倒卵形または倒卵形でビロード状の微毛が密生し,波状となり,ごく短縮した茎に放射状に密集する。このようすからwater lettuceの英名がついた。water cabbageの英名もある。匍匐(ほふく)枝を出し,その先に小苗を生じてよく繁殖する。微小な緑色花を葉間にかくれて咲かせるが,ほとんど目だたない。高温を好む熱帯の植物で,冬季,水温が15~20℃以上ないと衰弱して枯れることが多い。ふつうは水槽,池などに浮かせるが,底に土を入れ,これに根を張らせるようにすると生育がよくなる。そのためには水深は浅いほうがよい。越冬は温帯地域では,水槽で浅水にして温室内に入れる。繁殖は匍匐枝苗の株分けによる。アフリカやインドでは食用にされることがある。中国では血行促進,利尿などの民間薬に使われる。
執筆者:柳 宗民
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報