ハボタン(読み)はぼたん(英語表記)flowering cabbage

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハボタン」の意味・わかりやすい解説

ハボタン
はぼたん / 葉牡丹
flowering cabbage
[学] Brassica oleracea L. var. acephala DC. f. tricolor Hort.

アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の耐寒性多年草であるが、園芸上は一年草として扱う。キャベツの仲間で、葉に色彩をもたせ、観賞用に改良したものである。切り花、鉢植え花壇に利用される。ヨーロッパ原産。日本には江戸時代に渡来し、明治時代になってから、かなり広く栽培されるようになった。現在は日本でもっとも改良が進み、多く栽培されている。キャベツと同様に、短い茎に有柄の広い葉をつけるが、結球はしない。低温では、葉の中央部が白色か紫桃色に着色する。品種には、東京丸葉ハボタン(江戸ハボタン)、名古屋縮緬(ちりめん)ハボタン、大阪丸葉ハボタンがあるが、このほか、最近になって葉形の異なる、切れ葉のサンゴハボタンが育成された。7月下旬から8月上旬に播種(はしゅ)し、本葉3枚のころ仮植えし、9月下旬に定植する。アオムシの害が大きいので、数回殺虫剤で駆除する。

[横山二郎 2020年12月11日]

文化史

ハボタンは日本で改良された観賞植物だが、本来は野菜としてオランダから導入された。貝原益軒は『大和本草(やまとほんぞう)』(1709)で、ハボタンの祖と考えられている紅夷菘(オランダナ)、一名サンネンナを「味よし……植ゑて後三年にして花開く」と書いた。伊藤伊兵衛は『広益地錦抄(こうえきちきんしょう)』で、諸葛菜(しょかつさい)を「花ウコン色、葉は丸くしげく付く、花葉共に賞美せり……」と記述し、ハボタンの特色によくあう。ハボタンの名は山岡恭安(きょうあん)の『本草正正譌(ほんぞうせいせいか)』(1778)にボタンナ一名ハボタンと初見する。

[湯浅浩史 2020年12月11日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ハボタン」の意味・わかりやすい解説

ハボタン (葉牡丹)
Brassica oleracea L.var.acephala DC.

冬,花壇の唯一の材料として広くつくられているアブラナ科の草本。原種は江戸時代に日本に渡来し,オランダ菜と呼ばれていた不結球の緑葉のキャベツで,その後冬を迎えて着色するものに改良された。現在では,その系統により,丸葉種(東京ハボタン)とちりめん葉種(名古屋ハボタン)に分けられるが,中間雑種大阪ハボタンと称され,両者の特性を相半ばしてそなえている。最近キョウナ(京菜)との間に交配が行われて葉が細く切れた切れ葉もあらわれ,また鉢植用に矮性(わいせい)種も作出されている。いずれも紅色系と白色系とがあるが,葉の着色は低温により花芽分化が完了するとあらわれる。植物学的にはキャベツと同一種で,春に咲く花は帯白黄色でキャベツと異ならない。花壇,鉢植用に栽培するには種まきを7月上~中旬にするが,生花用としてとくに茎を長く育てるには,丸葉種を4月まきとする。8月中旬すぎにまくと育ちが遅れて葉の着色がみられない。モンシロチョウの産卵や,ヨトウムシの食害を防ぎ,移植を重ねてしまりのあるものをつくれば,初冬に着色して正月の庭園装飾となる。越冬した株は4月に開花するが,自家不稔のため2本以上植えることが必要で,異色の株やキャベツとの交雑を避けることがたいせつである。ハボタンはふつう一年草として取り扱われるが,結実させなければ多年草として育ち,前年の株が数本の枝を立てる。
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百科事典マイペディア 「ハボタン」の意味・わかりやすい解説

ハボタン(葉牡丹)【ハボタン】

原種はヨーロッパ原産のアブラナ科の植物で,キャベツの一種であるケールを観賞用に改良したもの。江戸時代に渡来し,日本で改良されて多くの品種ができた。葉の色に紅紫色系と白色系があり,波状にひだのある葉が細かく縮れるちりめんハボタン(名古屋ハボタン),葉縁にひだのない丸葉ハボタン(東京丸葉系と大阪丸葉系),切葉ハボタンに大別される。ちりめんハボタンは鉢植や花壇用に適し,他は切花用ともなる。近年は草たけ70cmにもなる切花専用の高性品種(丸葉ハボタン)もつくられている。7月に播種,葉が着色する12〜1月に観賞。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハボタン」の意味・わかりやすい解説

ハボタン(葉牡丹)
ハボタン
Brassica oleracea var. acephala

アブラナ科の二年草。キャベツの変種で江戸時代に輸入され,日本を中心に観賞の目的で改良された。花壇植や鉢植にされ,生け花としても観賞される。茎は太く直立し紫色を帯びる。葉は大型の広倒卵形で先端は丸く,基部は不規則な羽状に裂け,葉質は厚く表面に白粉をかぶる。茎の頂部に数十枚の葉が密集してつき,互いになかば抱き合って互生する。中心部の葉は次第に小型になり,縁が著しく波状にちぢれ,秋から冬にかけて,紅紫,淡黄または白色を帯びる。正月の観葉植物としてごく普通であるが,食用にすることはない。

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世界大百科事典(旧版)内のハボタンの言及

【水墨画】より

…その非難の対象となったものは,墨を口に含んで吹きつけて雲を描く吹雲という技法や山水画家の用いる潑墨といった技法で,その理由は線がないということであった。実際このころ,巷間で破墨とか潑墨とか呼ばれる技法が流行したようで,それらは山水樹石を主題としてとりあげ,用墨を重視して用筆すなわち線描を軽視ないしは否定するような傾向があった。中世絵画にあっては人物画が主題の中心を占め,山水画が独立して描かれることはまれで,山水や樹石は人物画の背景として図式的・装飾的に描かれるのが普通であった。…

※「ハボタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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