改訂新版 世界大百科事典 「ボルス」の意味・わかりやすい解説
ボルス
Wols
生没年:1913-51
フランスで活躍したドイツの画家。本名アルフレート・オットー・ウォルフガング・シュルツェAlfred Otto Wolfgang Schulze。ワイマールの高官を父として生まれ,幼時からバイオリンに才能を示すなど,恵まれた少年時代をドレスデンで過ごす。1932年パリに行き,絵を描くかたわら写真家として働く。第2次大戦勃発と同時に収容所に入れられ,絵が唯一の表現手段となっていく。40年収容所を出て南フランスに,終戦後はパリに住む。おびただしい数のグアッシュと100点にみたない油彩は,自己の存在を絵で問おうとした点で,サルトルが早くから注目していたように,人間の実存の悲劇が描かれている作品である。それと同時に,象形的(フィギュラティフ)な表現の崩壊を見せている点でアンフォルメルの先駆として位置づけられる。この2点において,さらにそれが切迫した表現行為によって展開されている点において,アメリカのJ.ポロックに対比されうる。まったく働かず,絵を展示することも売ることも諾(うべな)わなかった,最後の〈呪われた画家〉の一人といえる。アルコール中毒が快方に向かっていた矢先,馬肉にあたって早世した。カフカ,サルトル,アルトーらの挿画も残す。
執筆者:千葉 成夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報