馬肉(読み)ばにく

精選版 日本国語大辞典 「馬肉」の意味・読み・例文・類語

ば‐にく【馬肉】

〘名〙 食用の馬の肉。さくら肉
読本椿説弓張月(1807‐11)残「われ馬肉(バニク)を食はざれども」 〔説苑政理

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デジタル大辞泉 「馬肉」の意味・読み・例文・類語

ば‐にく【馬肉】

食用の馬の肉。桜肉さくらにく

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改訂新版 世界大百科事典 「馬肉」の意味・わかりやすい解説

馬肉 (ばにく)

桜肉ともいう。ウマは,ウシ,ヤギ,ヒツジ,ブタが家畜化された時代よりも遅く,前3000年ころ家畜化された。ウマは家畜化された後も役用,乗用,とくに戦闘用としてたいせつに取り扱われ,食用にされることは比較的少なかった。古代エジプトやインダス文明では,ウマは軍神の化身としてあがめられ,馬肉を食べることは一般に禁じられていた。古代ゲルマン人は馬肉を食べていたが,キリスト教の影響によってしだいに食べなくなった。そしてヨーロッパでは人々の日常生活と密接に結びつき,家族の一員として取り扱われるようになった結果,ウマの屠殺(とさつ)やその肉を食べることは一般に忌避されるようになった。また古代中国でもヒツジ,ブタ,ウシ,イヌはよく食べていたが,ウマは特別の場合でないと食べなかった。日本に小型のウマが大陸からもたらされたのは,縄文時代後期の前1000年ころと思われる。古墳時代になると中型のウマは急速に日本に広がるが,農耕用や戦闘用としてたいせつにされ,食べられた形跡は比較的少ない。しかし日本最初の肉食禁止令である675年(天武4)に発せられた詔勅に,〈牛馬犬猿鶏の宍(しし)(肉のこと)を食うことなかれ〉とあるので,他の肉と比較して少なかったとはいえ,当時馬肉を食べる習慣はあったようである。1995年の日本における生産量は8433tで,主としてハム,ソーセージなど肉製品の原料肉であるが,一部の地域では生肉でも販売される。
執筆者:

タンパク質20.1%,脂質2.5%で,他の食肉にくらべて脂質が少ない。また,多糖類のグリコーゲンが多いので,わずかに甘みがある。色素ミオグロビンが多いため,鮮やかな赤色を呈し,桜肉の別称はこれに由来する。〈蹴飛ばし〉ともいう。日本で行われている料理としては桜なべと,馬刺(ばさし)と呼ぶ刺身がおもなもので,前者ネギ,白滝,焼豆腐,シイタケなどとみそで煮ることが多い。後者は脂肪のないところを薄切りにして,ワサビじょうゆ,ニンニクじょうゆなどで食べるもので,松本や熊本の名物になっている。
肉食
執筆者:

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食の医学館 「馬肉」の解説

ばにく【馬肉】

《栄養と働き&調理のポイント》


 九州や信州などの馬産地以外では、あまり一般の食卓に上りませんが、最近ではヘルシーな食肉として人気上昇中。国産のほか、カナダやアルゼンチンからも輸入されています。
○栄養成分としての働き
 馬肉も牛肉、豚肉などと同様、良質の動物性たんぱく質に富んだ食品ですが、脂肪の量はずっと少なく低エネルギーという特徴があります。
 また、鉄の含有量は牛肉よりもさらに豊富で、しかも造血ビタミンのB12が多く、貧血や冷え症の人にとっては、まさに絶好の食品。虚弱体質、疲労倦怠(ひろうけんたい)、病後の衰弱や食欲不振の改善にも高い効果を発揮します。
 血行を促進し、粘膜(ねんまく)を丈夫にするナイアシンも比較的多く含んでいますから、動脈硬化や血栓症(けっせんしょう)の人も、積極的に料理に取り入れましょう。
 肥満ぎみの人やコレステロール値の高い人に安心してすすめられるのも、馬肉のよいところです。
 馬肉にはグリコーゲンが多く含まれるため、ほのかな甘みがあります。その甘みを生かし、独特のにおいを消すのが、おいしく味わうコツ。甘辛い割り下で煮た桜鍋、薬味を利かせた馬刺しが代表的料理法です。
○注意すべきこと
 料理にバターなどを多用しては、せっかくの低脂肪も無意味ですから、油の使い方に注意しましょう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「馬肉」の意味・わかりやすい解説

馬肉
ばにく

食用のウマの肉。俗称としてさくら肉、蹴飛(けと)ばしともいわれる。肉色は牛肉に似ている。馬肉の食用はあまり一般的ではないが、長野県松本や熊本県では古くから食用の習慣がある。ほかには、ソーセージ、ニューコンビーフ、プレスハムなどの加工品に用いられる。馬肉の特徴は、脂質が2.5%とたいへん少ないので味は淡泊なことである。筋肉中のグリコーゲンが牛肉や豚肉に比べて多く、そのため馬肉はグリコーゲンのもつ甘味がある。馬肉を煮たときに泡だつのもこのグリコーゲンによる。特有のにおいがあるので、調理ではみそ、ショウガ、ネギなどをにおい消しとして用いる。馬肉の料理としては、さくら鍋(なべ)と馬刺しが有名。さくら鍋は馬肉を用いたすき焼きで、だし汁にしょうゆ、砂糖、みりんをあわせた割下を用い、馬肉とみそを加えて煮る。長ネギ、糸こんにゃく、豆腐、シュンギクなどの材料も加えて煮ながら食べる。馬刺しは、ロース肉の部分を薄切りにし、しょうがじょうゆで食べる。

[河野友美・大滝 緑]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「馬肉」の意味・わかりやすい解説

馬肉
ばにく
horse meat

食肉に用いられる馬の肉。他の食肉に比べて筋繊維が太く,赤み色が強い。蛋白質含有量は畜肉中で最も多く 20.5%,脂肪は 3.7%である。保水力は弱い。加工用としては2~4歳の脂肪の少い色の淡い若馬の肉が適している。

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百科事典マイペディア 「馬肉」の意味・わかりやすい解説

馬肉【ばにく】

桜肉と俗称。脂肪分が少なく独特のくせをもつが,タンパク質とグリコーゲンに富む。多くショウガなどとともに調理され,桜鍋(なべ),缶詰肉などにされる。

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栄養・生化学辞典 「馬肉」の解説

馬肉

 ウマの肉.食用にする.

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