桜肉ともいう。ウマは,ウシ,ヤギ,ヒツジ,ブタが家畜化された時代よりも遅く,前3000年ころ家畜化された。ウマは家畜化された後も役用,乗用,とくに戦闘用としてたいせつに取り扱われ,食用にされることは比較的少なかった。古代エジプトやインダス文明では,ウマは軍神の化身としてあがめられ,馬肉を食べることは一般に禁じられていた。古代ゲルマン人は馬肉を食べていたが,キリスト教の影響によってしだいに食べなくなった。そしてヨーロッパでは人々の日常生活と密接に結びつき,家族の一員として取り扱われるようになった結果,ウマの屠殺(とさつ)やその肉を食べることは一般に忌避されるようになった。また古代中国でもヒツジ,ブタ,ウシ,イヌはよく食べていたが,ウマは特別の場合でないと食べなかった。日本に小型のウマが大陸からもたらされたのは,縄文時代後期の前1000年ころと思われる。古墳時代になると中型のウマは急速に日本に広がるが,農耕用や戦闘用としてたいせつにされ,食べられた形跡は比較的少ない。しかし日本最初の肉食禁止令である675年(天武4)に発せられた詔勅に,〈牛馬犬猿鶏の宍(しし)(肉のこと)を食うことなかれ〉とあるので,他の肉と比較して少なかったとはいえ,当時馬肉を食べる習慣はあったようである。1995年の日本における生産量は8433tで,主としてハム,ソーセージなど肉製品の原料肉であるが,一部の地域では生肉でも販売される。
執筆者:森田 重広
タンパク質20.1%,脂質2.5%で,他の食肉にくらべて脂質が少ない。また,多糖類のグリコーゲンが多いので,わずかに甘みがある。色素のミオグロビンが多いため,鮮やかな赤色を呈し,桜肉の別称はこれに由来する。〈蹴飛ばし〉ともいう。日本で行われている料理としては桜なべと,馬刺(ばさし)と呼ぶ刺身がおもなもので,前者はネギ,白滝,焼豆腐,シイタケなどとみそで煮ることが多い。後者は脂肪のないところを薄切りにして,ワサビじょうゆ,ニンニクじょうゆなどで食べるもので,松本や熊本の名物になっている。
→肉食
執筆者:菅原 龍幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
食用のウマの肉。俗称としてさくら肉、蹴飛(けと)ばしともいわれる。肉色は牛肉に似ている。馬肉の食用はあまり一般的ではないが、長野県松本や熊本県では古くから食用の習慣がある。ほかには、ソーセージ、ニューコンビーフ、プレスハムなどの加工品に用いられる。馬肉の特徴は、脂質が2.5%とたいへん少ないので味は淡泊なことである。筋肉中のグリコーゲンが牛肉や豚肉に比べて多く、そのため馬肉はグリコーゲンのもつ甘味がある。馬肉を煮たときに泡だつのもこのグリコーゲンによる。特有のにおいがあるので、調理ではみそ、ショウガ、ネギなどをにおい消しとして用いる。馬肉の料理としては、さくら鍋(なべ)と馬刺しが有名。さくら鍋は馬肉を用いたすき焼きで、だし汁にしょうゆ、砂糖、みりんをあわせた割下を用い、馬肉とみそを加えて煮る。長ネギ、糸こんにゃく、豆腐、シュンギクなどの材料も加えて煮ながら食べる。馬刺しは、ロース肉の部分を薄切りにし、しょうがじょうゆで食べる。
[河野友美・大滝 緑]
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