日本大百科全書(ニッポニカ) 「マヨラナ」の意味・わかりやすい解説
マヨラナ
まよらな
sweet marjoram
[学] Origanum majorana L.
Majorana hortensis Moench
シソ科(APG分類:シソ科)の多年草。英名読みでマージョラムともいう。和名はハナハッカ。茎は30~60センチメートル。葉は小さく、微毛に覆われ、灰色を呈する。夏に、紫または白色の小花を開く。全草に2%ほどの精油を含み、芳香がある。地中海からアラビアにかけての原産で、フランス、ギリシア、メキシコなどが主産地である。日本へは明治初期に伝来したが、栽培は少ない。
[星川清親 2021年9月17日]
食品
香草のなかでも香りの高いもので、香辛料としては古代ギリシア、ローマの時代から使われてきた。生葉または乾燥した葉を使うが、香辛料としては乾燥したものが多く用いられる。繊細で甘い芳香とほろ苦味が特徴で、オレガノによく似ている。肉や内臓類の矯臭によく、香味は食欲増進の効果をもつので、野菜料理、肉料理、レバー・ソーセージ、ボローニャソーセージ、チーズ料理、とり肉やシチメンチョウの詰め物、ソース、スープなどの香りづけに用いられる。
[齋藤 浩 2021年9月17日]
文化史
古代のエジプトで香料に用い、ギリシアでは紀元前から栽培され、花冠に用いられていた。プリニウスは、マヨラナの芳香を、刺すような香りと表現し、もっとも芳香があるのはキプロス産で、ローマでは花が夏に咲くと花輪をつくると記述している(『博物誌』)。また、プリニウスは、酢と塩に混ぜて、サソリの解毒剤や月経不順の塗り薬に使用するとも書いている。
イギリスでは乾かした葉をハーブ・ティーにして飲んだ。マヨラナは眠りを誘う効果があるといわれ、枕(まくら)用に使われ、エリザベス1世も他のハーブとともに枕に詰めて愛用したという。
[湯浅浩史 2021年9月17日]