改訂新版 世界大百科事典 「マウル」の意味・わかりやすい解説
マウル
Otto Maul
生没年:1887-1951
ドイツの地理学者。フランクフルト・アム・マインに生まれ,歴史と哲学を学んだ後,地理学に転じた。E.vonドリガルスキ,A.ペンク,T.フィッシャーの影響を受け,さらにウィーンでE.ブルックナー,E.オーバーフーマー,N.クレプスの指導をえた。《ペロポネソスと南・中部ギリシアの形態学》(1921),《政治地理学》(1925)のほか,南東ヨーロッパ,地中海地方,北アフリカ,ブラジルなどに関する論文がある。短期間の《地政学雑誌》の共同編集を辞して,1929年以来グラーツ大学の教授。研究の焦点は地形学,政治地理学,地誌学にあったが,地理学本質論にも関心が深く,とくに景観学と比較研究に独自の見解を示し,《文化景観の地理学》(1932),《一般および比較地誌学》(1939-46),《境界帯設定法の意義》(1950)などの論考がある。境界を漸移的な〈境界帯〉とみなすとともに,〈境界帯〉の内部にある特徴が首尾一貫してみられるとき,それを〈統一地域〉と称して,比較研究の単位としたところに特徴がある。
執筆者:水津 一朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報