新しく刊行された書籍について,署名あるいは匿名で批評し評価することをいうが,装丁や造本面など書籍の外形について触れることはなく,著作の内容に関する批評が中心となる。〈書評〉という言葉は大正時代までは使われておらず,それまでは〈新刊書批評〉あるいは〈書籍批評〉とか〈ブック・レビュー〉などの言葉が用いられており,〈演劇批評〉が〈劇評〉となったように〈書評〉という言葉が生まれたものと思われる。この〈書評〉という言葉が用いられたのは,1929年1月号の《史学雑誌》であるが,〈書評〉という言葉が一般的に定着するのは,昭和10年代に入ってからのことである。書評の媒体としては,日刊新聞の書評欄,書評専門紙誌,週刊誌・月刊誌などの書評欄があるが,放送はまだあまり書評媒体としては機能していない。外国ではイギリスの《タイムズ文芸付録The Times Literary Supplement》,アメリカの《ニューヨーク・タイムズ書評紙The New York Times,Book Review》,フランスの《ヌーベル・リテレールNouvelles Literaires》などが有力な書評媒体となっている。日本の書評専門雑誌としては1887年創刊の《出版月評》が最も古く,以後《書物展望》とか《ブック・レヴュー》などの書評誌が大正時代に入って創刊されたが,あまり長くつづかず,第2次大戦後創刊の《読書展望》《書評》(いずれも1949休刊),《本と批評》《50冊の本》(いずれも1981休刊)なども存続できず,現在は《本の雑誌》などを残すのみで,書評雑誌は育ちにくい。そのため新聞による書評が中心となり,日刊紙では昭和初期から《東京朝日新聞》が毎週〈読書ペーヂ〉を設けて書評を優遇し,これにならって他紙でも書評に力を入れるようになり,現在では毎週2~3ページぐらいの書評欄がどの新聞にも掲載されている。また書評を専門に掲載する書評新聞としては,週刊の《日本読書新聞》(1937創刊,1945復刊),《図書新聞》(1949創刊),《週刊読書人》(1958創刊),月2回の《ほるぷ図書新聞》(1968創刊)がある。書評は膨大な点数にのぼる新刊書の中から良書を選ぶ指針としての機能を果たしているが,文化の中心に位置する書物を批評することはそのまま文化の批評としての意義をもっており,書物による文化のよりよい創造のために果たす役割は大きい。
執筆者:植田 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
主として新刊書籍の内容を批評すること。通常、著者紹介、内容の紹介や分析、客観的位置づけなどが行われるが、印象批評の色彩が強いものや、なんらかのカテゴリーやテーマを設けて類書を選択・比較するものも含まれる。書評は海外では、出版点数が激増した19世紀末から20世紀初頭にかけて成立した。イギリスの『タイムズ文芸付録』(1902創刊)や『ニューヨーク・タイムズ・ブック・レビュー』(1896創刊)はその一例である。わが国では近代文学の成立期である明治20年代に『出版月評』『日本図書月評』などの書評誌が創刊され、同時に『国民之友』『めさまし草』ほかの雑誌が文芸時評を掲載し始めた。その後書評専門紙として『日本読書新聞』(1937創刊、1945復刊、1984廃刊)、『図書新聞』(1949創刊)、『週刊読書人』(1958創刊)などが発行され、書籍情報誌として『出版ニュース』(1946創刊)、『本の雑誌』(1976創刊)、『ダ・ヴィンチ』(1994創刊)などがある。一般には新聞の読書特集や週刊誌の書評欄などが図書選択の指針とされるほか、テレビやインターネットによる図書紹介、書評なども増えており、石川達三のいう「書評は文化批評であり読書指導でもある」という性格が、いよいよ強く求められている。
[紀田順一郎]
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