マッケン(読み)まっけん(英語表記)Arthur Machen

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マッケン」の意味・わかりやすい解説

マッケン
まっけん
Arthur Machen
(1863―1947)

イギリスの怪奇小説家。ウェールズの出身。若いころロンドンに出て古本屋に勤めたり翻訳をしたりして生計をたてた。1894年、代表作となった『パンの大神』を発表、翌年、連作短編集『怪奇クラブ』(原題『三人の詐欺師』)を発表したが世評は芳しくなかった。彼の恐怖の世界では、伝説上の小人妖精(ようせい)や半人半羊神が実在し、彼らとかかわった人間の罪悪と性の悦楽から生まれるエクスタシー主題にしており、とうていビクトリア朝の良風美俗と相いれるものではなかった。キリストの聖杯をテーマにした『大いなる来復』(1915)、第一次世界大戦中フランスの戦場に出現した中世の幻の弓兵を描く『モーンスの弓兵』(1915)などの作品があり、ラブクラフトを介して20世紀幻想文学に大きな影響を及ぼした。

厚木 淳]

『平井呈一訳『怪奇クラブ』(創元推理文庫)』

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