日本大百科全書(ニッポニカ) 「マニピュレーター」の意味・わかりやすい解説
マニピュレーター
まにぴゅれーたー
manipulator
人間の腕と同じ機能をもつようにつくられた遠隔操作機械。マジックハンドともいう。放射性物質をつかんで移動したり、あるいは容器に入れるというように、人間の腕、手先の運動そのままの機能をもたせるのが理想的であるが、人間の手は非常に複雑な運動をするので、そのまま機械に置き換えることはできない。現在のマニピュレーターは機械的機能に電気的機能を加え、人間の手先の運動に近い動きをするようにできている。
放射性物質を、放射線が外に漏れないように遮蔽(しゃへい)された部屋に入れ、放射線を通さない特殊なガラスの窓越しに、放射性物質を目で見ながらマニピュレーターを操作し、つかんで移動する。この機械の基本的条件は、変位の三自由度、角度位の三自由度、つかみ動作の一自由度、合計7個の運動の自由度をもっていることである。このほか、操作が容易であること、目的のものをつかんだときに、そこに働いている力が操作している手先にも感じられること、摩擦や慣性の小さいことなどの諸性質が要求される。放射性物質を取り扱うところには不可欠の装置である。そのほか、高熱物質の運搬・移動用、あるいは潜水調査船、月面探査用作業腕などにも使用される。
[中山秀太郎]