日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルメロ」の意味・わかりやすい解説
マルメロ
まるめろ
[学] Cydonia oblonga Mill.
バラ科(APG分類:バラ科)の落葉小高木または低木。中国名は榲桲。枝条は細長く、屈曲性が強い。葉は全縁で、卵形から長円形。基部は円形または亜心臓形で、先端はよくとがる。裏面に白い短毛が密生。花は淡紅色で5月上旬から中旬に、結果枝の先端に1花ずつつき、花径3~4センチメートル、花弁は5枚。雄しべは20余本、雌しべは5本。果実はセイヨウナシ形または丸形で宿存萼(がく)があり、果面には灰白色の短毛がある。果肉は石(せき)細胞が多く、香気が強い。甘酸っぱく軽度の渋味がある。芯(しん)を抜き、薄めに切って砂糖漬け、または火を通してシロップ漬けとして瓶詰や缶詰とするほか、糖菓ともする。また果実酒にもよく用いられる。
ペルシア、トルキスタン地方の原産で、ヨーロッパではギリシア・ローマ時代から栽培され、中国へは10世紀ころ渡来したといわれる。日本へは1634年(寛永11)に長崎に伝えられた。現在、長野県諏訪(すわ)地方ではカリンとよばれ、わずかに栽培されるが、真正のカリンPseudocydonia sinensis (Thouin) C.K.Schneid.(Chaenomeles sinensis Koehne)とは異なる。また新潟県ではカンタン、山梨県ではブッシュカンとよぶが、シトロンの1変種であるブッシュカンとは異なる。なお和名のマルメロはポルトガル語marmeloによる。繁殖は取木、挿木、または実生共台(みしょうともだい)の接木(つぎき)により、なかにはセイヨウナシの矮性(わいせい)台木として利用されるものもある。
[飯塚宗夫 2020年1月21日]